米中間選挙後の株式市場はどう動く、注目点はここ ハイテク分野など3分野では今後の進路を決める

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今週実施される米中間選挙は、株式投資家にとって決定的な瞬間となりそうだ。大方の世論調査では、共和党が少なくとも下院で勝利すると見込まれている。そうなれば民主党の上下両院支配に終止符が打たれ、政治が膠着(こうちゃく)する時代に突入する可能性もある。

こうしたシナリオは現状維持になりがちなため不確実性が低下することから、株式相場にとっては必ずしも悪材料ではない。それでも、ヘルスケアやエネルギー、ハイテクといった特定の分野では、次期議会の構成がその後の進路を決める重要な鍵になる。

共和党は上院でも勝利する可能性はある。その場合、同党は議会両院を制し、優先政策の推進が容易になる。バイデン大統領は拒否権を行使するかもしれないが、エネルギーや防衛、医薬品、バイオテクノロジーといった共和党が重視する産業には最善のシナリオとなり得る。

議会の民主党支配が終われば、バイデン大統領は自身の残る政策課題の遂行に議会を利用しにくくなり、大統領令に一段と頼らざるを得なくなる可能性がある。

株式投資家が中間選挙結果後に注目すべき分野について以下にまとめた。

大麻

大麻関連セクターは過去1年間に大きな打撃を受けた。米国の法律が断続的に改正される中、投機的な大麻関連業界の投資家の間でリスクオフムードが広がったためで、大麻関連株の指数は今年、57%下落。ティルレイ・ブランズやSNDLは45%以上の値下がりを演じた。

投資家は複数の州で実施される大麻合法化関連の住民投票の行方を注視するだろう。メリーランドとアーカンソー、ミズーリ、ノースダコタ、サウスダコタの有権者は成人向けの合法化の是非を問われる。

ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、ケネス・シェイ氏は「4州か5州で承認されれば、好材料と見なされるだろうが、メリーランド州で承認されなければ間違いなく悪材料だ」とコメントした。

  

ヘルスケア

ヘルスケア業界では、中間選挙によって同セクターへの影響が誇張される中、投資家は薬価問題を巡る米議会の動向を注視している。

インフレ抑制法に盛り込まれたメディケア(高齢者・障害者向け医療保険制度)による一部医薬品の薬価交渉を認める規定は、米国の薬価を引き下げる画期的な変化だと民主党は売り込んでいる。高額医薬品が全て交渉対象になるわけではないが、特定のがん治療薬や高齢者が使用する有名な医薬品は早ければ2026年に引き下げられ得る。

カウエンのアナリスト、リック・ワイセンスタイン氏は10月14日付のリポートで、「共和党は伝統的に民主党に比べて製薬業界に好意的な姿勢だ。共和党は薬価の規定を取り消すことはできないものの、法律の施行を遅らせるため公聴会の開催やその他の方法を検討すると表明している」と指摘した。

ファイザーやアッヴィ、イーライリリー、メルクなどの製薬会社は、薬価ルール変更の場合、収益見通しに影響を受ける可能性がある。 

米国上場の中国株

米国に上場するがトランプ政権時代の監査関連法を順守しない中国企業を上場廃止にする方針を民主・共和両党が支持している。これに加え、中国を巡る地政学的緊張を背景に、米上場の中国株で構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数は今年39%下落した。

  

カウエンのアナリスト、ジャレット・サイバーグ氏は、共和党が上下両院を制すれば、監督が一段と強化され、監査状況だけでなく、中国企業の米国上場の是非さえも公聴会で取り上げられる可能性が高いと指摘する。

エネルギー

米株式相場にとって厳しい1年となる中、エネルギー株は株式市場で希少な明るさを放っている。原油・天然ガス価格の高騰が株価を押し上げているが、これは米国民の燃料コスト増加につながっている。インフレに伴う負担が選挙の争点となる中で、民主党にとってエネルギー業界は格好のターゲットだ。

共和党が上院もしくは下院を制すると想定した場合、エネルギー政策に大きな変化は見込みにくい。バイデン政権が最近、石油会社への超過利潤税を検討していることを明らかにしたことから、フィリップス66やエクソンモービル、シェブロンなどの株価が下落したが、こうした提案は共和党議員らに阻止される公算が大きい。

現在の議会の構成でも、バイデン政権には税制案を実現する力はほとんどないと、ハイト・キャピタル・マーケッツのマネジングディレクター、ベンジャミン・ソールズベリー氏は指摘する。同氏は「議会が年内にこの問題で前進する可能性は極めて低い。2023年にそれに対処する見込みもない」と語った。

  

 

原題:A Stock Trader’s Guide to the US Midterm Elections(抜粋)

--取材協力:、、、.

(米上場の中国株やエネルギー業界に関する部分を追加して更新します)

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著者:Matt Turner、Norah Mulinda

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