年功序列を見直す日本企業が陥る最大の悪手 ジョブ型への安易な転換は若年層の失業を招く
まず、チームワークで仕事を進めている日本企業において、個人単位のジョブを明確に定義するのは、かなり難しい作業です。ジョブを定義する以前に、仕事の進め方を見直す必要がありそうです。
また、ジョブを明確に定義できたとしても、ジョブに人を当てはめる際「この仕事は難易度が高いから、今まで通りベテランの山田さんにやってもらおう」といった運用をすると、年功序列と変わらないことになってしまいます。
「当社は、2年前からジョブ型に転換しました。しかし、ジョブの定義が難しく、9割以上のジョブをそれまでの担当者が引き続き担当しました。仕事が変わらず、定期昇給がなくなったので、従業員は『賃下げしたいだけだろ』と憤っています。いまジョブ型の修正に着手しているところです」(電機・人事部長)
ジョブ型雇用への転換という方向性は間違っていませんが、実際に会社を良くするためには、現在のやり方に囚われずゼロベースで改革を進める必要がありそうです。
年功序列社会から学習社会へ
年功序列の廃止は、企業で働く人・働きたい人にも大きな影響を与えます。ジョブ型に転換した場合を想定して、影響を2つ紹介しましょう。
一つは、新卒一括採用が崩壊し、若年層の失業が増えます。ジョブ型雇用は「経理担当のポストが空いたので1名採用します」という欠員採用が基本です。欠員採用ではスキルを持つ経験者の中途採用が優先され、未経験の新卒・若手は敬遠されるので、若年層には厳しい社会になります。
もう一つ、従業員のリスキリング(学び直し)が不可欠になります。ジョブ型雇用で収入を増やすには、従業員は社内のより高度なジョブを担当するか、転職しなければいけません。そのためには、従業員は学習してスキルを高める必要があります。
これから働こうという就活生は、学習してスキルを上げないと経験者に伍して採用されません。すでに働いている従業員も、学習してスキルを上げないと収入が増えません。もし年功序列社会が崩壊したら、その後に現れるのは学習社会ということなのです。
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