タイに渡った元JR北海道「キハ183」再始動への道 「日本カラー」打ち出し観光列車ルートで試運転

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出発した列車はゆっくりとしたスピードで、東本線から北本線へつながる連絡線に入り合流。線路際を行く人たちは物珍しそうにこちらを見たり、スマホで撮影したりしている。しっかりとカメラを構えた鉄道ファンと思しき人もかなり多い。

すぐに巨大な「コンクリート要塞」のようなバンスーグランドステーションが見えてくるが、駅南側の地上線と新たに近郊路線として整備された「レッドライン」の高架線を結ぶ部分は準備工事だけで止まっており、この列車はこの先も地上の旧線側を走行する。キハ183もデビュー後しばらくの間は、バンスーではなくフアランポーン駅発着となりそうだ。

バンコク市内はゆっくりと進んだが、レッドラインの高架が地平に下り、並行する頃には時速100km前後で走っていた。さすがは元特急車の余裕の走りっぷりで、車内は極めて静寂、北本線は線路状況もよく、揺れもほとんど気にならない。そして、シートピッチの広いリクライニングシートに冷房のほどよく利いた空間でゆったりとくつろげる。ここが従来の観光列車と大きく異なるところだ。

タイ国鉄キハ183の車窓
一面に広がる穀倉地帯の風景は、北海道の車窓とも重なるイメージだ(筆者撮影)

郊外に出ると車窓は一面の穀倉地帯だ。まるで北海道の大地を走っているかのような錯覚に陥り、これはこれで面白い。実は今回よりも1週間ほど前、旧泰緬鉄道区間を走るナムトック線の試運転も設定されていたが、洪水のために途中で運転打ち切りになってしまった。そのときは心底残念に思っていたが、キハ183、どこを走ってもタイの風景に似合っている。

いよいよダム湖上の橋へ

マッカサンを出て2時間ほどで、世界遺産でも有名なアユタヤだ。観光列車として運行を始めた暁には必ず停車することになろうが、この日はトップスピードで通過。以前の試運転でチェック項目は全て確認済みということだろう。その後、北本線から分岐し、イーサーン地方に進路を取る。ここからは東北本線である。ほどなくして、ノンカイ方面とウボンラチャターニー方面の分岐するケンコーイジャンクション駅に到着。エンジンをはじめとした機器の状態を確認するため、ここでしばらく停車した。

機器確認の後、ノンカイ方面の線路に入る。ここからが今日の試運転の本番である。ところどころ、車両限界の測定などで停車したり、減速したりしながら進んでいく。車窓には小高い山や湖沼が姿を現し、函館線の大沼公園付近を走っているような雰囲気である。

やがて視界が一気に開け、ダム湖上区間に入った。湖の上をしばらく走った後に停車。仮乗降場とすら言いにくい雰囲気だが、一応、線路際にステップが設置されており、ここに停車する列車があることを示している。スタッフが車両側のステップと地上との距離を計測して問題がないことを確認し、ここで全員下車した。SRT側としても、ここが今日の試運転のハイライトであろう。一歩間違えれば湖に落っこちるのではないかと、内心冷や冷やしながらの記念撮影タイムとなった。

パーサックチョンラシットダム駅
パーサック・チョンラシットダムで、ホーム(?)とステップとの段差を計測するスタッフ(筆者撮影)
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