タイに渡った元JR北海道「キハ183」再始動への道 「日本カラー」打ち出し観光列車ルートで試運転

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この日の行き先は、首都バンコクの北東約150kmに位置するパーサック・チョンラシットダム。このダム湖上の区間を経由して、コックサルン駅までの区間を往復する。これは、沿線のひまわり畑が見ごろとなる11月上旬から1月下旬にかけて毎年運転される「ひまわり列車」の走るルートである。

この列車は、ひまわり畑への観光客輸送と同時に、写真映えスポットとして知られるダム湖の橋梁上で特別に停車し、その上を散策できるのが売りである。例年、長大な客車列車で運行しており、今年分の予約もすでに始まっているため、増発分としてキハ183の投入を想定しているのかもしれない。

首都バンコクのど真ん中にありながらホームは1つだけで、田舎のローカル駅の風情もあるひなびたSRTマッカサン駅に、定刻からやや遅れて4両編成のキハ183(キハ183-219+キハ182-29+キハ182-22+キハ183-208)が入線してきた。今回、譲渡された車両のほとんどが「スラントノーズ」と呼ばれるキハ183の初期タイプで、2016年度に引退したグループである。晩年は石北線の特急オホーツクなどで活躍し、いかついスタイルが人気だった。タイでは、早くも現地の鉄道ファンから「ガンダム」という愛称が付けられているそうだ。

マッカサン駅に入線するキハ183
マッカサン駅に入線するキハ183の試運転列車。背後にあるのは空港鉄道の高架橋(筆者撮影)

「日本カラー」を前面に

ヘッドマークの部分にはオリジナルの絵柄が入り、SRTの意気込みの高さを感じる。側面にも「特急オホーツク/マッカサン工場」と遊び心のある行先表示が入っている。外観で変化した部分としては、運転台上部にあったヘッドライトが車両限界の都合で撤去され、もともとステンレスの飾り帯があった部分に移設されているが、非常にしっくりとしている。国鉄特急エンブレムもそのままだ。そのほか、ヘッドライト下に車番が追加されており、JR九州のようなエッセンスを感じる。そのサイドにはSRTとJR北海道のロゴが入っている。

タイ国鉄キハ183の方向幕
側面の方向幕。「特急オホーツク/マッカサン工場」と書かれている(筆者撮影)

かつては「ボローツク」と揶揄されたほどのキハ183だが、反射がまぶしいほどに美しく再塗装され、車番などの表記類もいわゆる「国鉄フォント」と呼ばれる書体をそのまま引き継いでいる。内部には相当な日本びいきの鉄道好きがいるのだろう。参加証としてゆるキャラチックなキハ183がデザインされたオリジナルピンバッジをもらって車内に乗り込むと、マッカサン工場の整備チームの中には、日本の車両がプリントされたシャツを着ているスタッフもいて、やはり好きなんだなと確信した。

車内はほぼ日本時代と変わらず、日本語の各種表記類もそのままで、ドアやトイレの押しボタンなど、必要に応じてタイ語が追加されている。さらに、デッキとの仕切り部分のポスター枠では、鉄道沿線の見どころスポットを日本語で紹介している。もっと日本人観光客にも鉄道を利用してもらいたいというSRTからのメッセージを感じる。それほどまでに「日本カラー」を前面に打ち出した列車である。

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