「トイレをがまんする子」の見過ごせない健康問題 小学生の6人に1人が「便秘状態」という衝撃事実

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しかし、子どもは違います。排便時に痛みや不快を感じると、それを避けようとします。そのもっともわかりやすい行為ががまんです。排便しなければ具合が悪くなるなんて考えないので、とことんがまんします。

排便が不快でなくても、遊びに夢中だとがまんしてしまうことがあります。がまんを繰り返すと、うんちが大腸にとどまる時間が長くなるので硬くなります。硬くなると、うんちは出しづらくなり、痛みを伴うこともあります。これが子どもにとって非常によくありません。痛いので、さらにがまんするようになり、便秘の悪循環をもたらします。

結果的に、直腸にたくさんのうんちが滞っている状態が慢性化し、鈍い直腸となってしまいます。便意を感じにくい、もしくは便意を感じないことにつながるのです。便意がなければ、毎回、たくさんのうんちを腸に溜め込むことになってしまいます。

ひどい便秘になると、直腸に溜まった硬いうんちの隙間から液状のうんちが漏れることで、下着を汚してしまうこともあると聞いています。もちろん本人が意識的に漏らしているわけではありません。それにもかかわらず、周囲から注意されたりするので、自尊心も傷ついてしまいます。このような状態にならないようにするためにも、大人が日ごろからうんちの状態をチェックすることが必要なのです。

全国の小中学校でのうんちチェック

大人も子どもも排便に関するリテラシーを高め、日ごろからうんちをチェックする習慣があれば、子どもたちの便秘の慢性化を減らせると考えています。

日本トイレ研究所は、2022年11月10日(いいトイレの日)から11月19日(世界トイレの日)を「うんちweek」として特設サイトを立ち上げ、排泄の大切さを啓発する活動を行っています。

今年のテーマは「おなかにいいことしよう!」です。

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便秘は大人の病気と思いがちですが、子どもにも生じます。食べることや運動することと異なり、排便に関する情報は多くありませんし、学ぶ機会もほとんどありません。他人に見せるものでもありません。だからこそ、日ごろからていねいに家族や学校で話題にすることが必要です。

子どもたちの健康を守るためにも、すべての小学校で排便の大切さを伝える教育を実施すべきだと思います。

親子を対象にした出前教室
親子を対象にした出前教室。トイレットペーパー以外の紙をトイレに流すと詰まってしまう可能性があることを伝えた(写真:日本トイレ研究所提供)
加藤 篤 日本トイレ研究所代表理事

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かとう あつし / Atsushi Kato

まちづくりのシンクタンクを経て、現在、特定非営利活動法人日本トイレ研究所代表理事。災害時のトイレ・衛生調査の実施、小学校のトイレ空間改善、小学校教諭等を対象にした研修会、トイレやうんちの大切さを伝える出前授業などを展開している。「災害時トイレ衛生管理講習会」を開催し、災害時にも安心して行けるトイレ環境づくりに向けた人材育成に取り組む。排泄から健康を考える啓発活動「うんちweek」を展開。循環のみち下水道賞選定委員(国土交通省)、東京都防災会議専門委員(東京都)など。著書は『もしもトイレがなかったら』(少年写真新聞社)、『うんちはすごい』(株式会社イーストプレス)など。

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