真心ブラザーズ「自分に優しく、甘く」哲学の真髄 何でも受け入れるというか、多少嫌でもやる(笑)
──そして完成したアルバム『TODAY』は、おふたりの「今」を感じる仕上がりです。
桜井:まさに「現在地」のアルバムです。何か新しいことに挑戦するといった感覚はとっくに過ぎていまして(笑)。先日のイベントでROLLYさん(すかんち)と大槻ケンヂさん(筋肉少女帯)とで「バンドって3枚目のアルバムくらいですべてを出し切るよね」という話をしていたのですが、新しいものはそうそう作れない。
だけど2022年のこの瞬間は二度と戻ってこなくて、そこで感じたことを純粋に音楽にしたというかんじですね。「18枚もアルバムを出したミュージシャンが今見えている世界はこんなものですよ」という提示はできていると思います。
YO-KING:手応えはいつも以上に感じているし、完成したからには1人でも多くの人に届くアルバムであってくれたらいいという思いはあります。
いい具合に気分が落ち込んでいたときに作った楽曲も
──YO-KINGさんは、江﨑文武さん(WONK、millennium parade)など、異なる世代のミュージシャンとタッグを組んでますよね。
YO-KING:江﨑さんとは、以前にごはんを食べる機会があって、品のあるいい人だなと思っていたので。僕もこう見えて「品のある」人間なので(笑)、共通するものがあるなって。
──「雨」は、江﨑さんの弾くピアノで構成された深みのあるバラードです。
YO-KING:実はいちばん好きな“本番一発録り”スタイルです。あんまり作り込んで、制作するのは好きじゃないんですよ。
──江沼郁弥さん(ex.plenty)と制作の「LOVE IS FREE」は、生音ではなくトラックを駆使したダンストラック。真心ブラザーズでは珍しいタイプの楽曲では?
YO-KING:僕は1990年代に「エレファントラブ」というヒップホップのユニットを組んでいて、当時流行していたブレイクビーツの放つループ感というものが、自分の骨格の一部になっている。それを、ここ数年表現したいと考えていたので、ようやく発表できたというかんじですね。
──一方、桜井さん制作の楽曲は、どれも柔らかな日常の風景が思い浮かんでくるようです。
桜井:ここ数年のコロナの影響、また制作時期が梅雨だったこともあり、いい具合に気分が落ち込んでいたので、これはチャンス!と思って作った楽曲です(笑)。