雑踏事故が露わにした韓国社会の「イカゲーム化」 責任逃れしようとする政府と始まった犯人捜し

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ある生存者は「屈強な20代男性の一団が『押せ!押せ!』という叫ぶ声が背後から聞こえてきた。彼らを許さない」という趣旨の内容をネット上に書き込んだ。特徴的な髪型や衣装の様子が書かれており、ネットを中心に犯人捜しに拍車がかかっている。

当然、必要な捜査ではあろう。だがもし警察が「犯人」を特定したとしても、この事故の原因がすべてそこにあるのか、どう罰することができるのかもまた、議論となっている。「それよりも未然に路地の通行を規制すべきではなかったのか」という行政の不備を指摘する声が圧倒的な中、この「すれ違い」が今後は大きな争点となる見通しだ。

政府の責任はどこまで?

「爆弾ゲーム」とは、爆弾に見立てたボールを数人で回し、音楽が止まった際にボールを持っていたものが罰ゲームを行う遊びだ。今回の事故後の政府内の動きは、これに近いものがある。

ゲームの登場人物は、梨泰院が所属するソウル龍山区長、ソウル市長、市民の安全を司る行政安全部の長官などだ。

まず、朴熙英(パク・ヒヨン)龍山区長は、事故直後に現場に駆けつけたというものの、事故後に連絡が取れなくなり立場表明が事故翌日の午後5時まで遅れた。朴区長は韓国メディアに「現場の収拾が先だった」としたが、立場表明文には事前の備えが足りなかったという認識は含まれず、謝罪の言葉もなかった。

朴区長はこれに対し「魂の込もっていない謝罪は意味がない。事前の準備がどう適用されていたのかをまず把握する」とかわした。

そして31日の会見では「区長としてはできることはやったが、ここまでの人出は予想できなかった」とした上で、「これ(ハロウィン)はお祭りではない。お祭りならばイベントの主催者がいるが、ただハロウィンの日に集まる一つの『現象』として見るべき」と見解を明かした。やはり謝罪の言葉はなかった。「現象」という発言は「責任逃れだ」とメディアや世論の批判を浴びている。

ソウル市の呉世勲(オ・セフン)市長は事故翌日の午後になって現場に到着した。事故の一報を聞き、海外出張から急遽帰国したものだ。

呉市長は現場で「子どもを亡くした親御さんたちにどんな労りの言葉をかけていいかわからない」とし、「ソウル市は事故の収拾に万全を期す」と述べた。謝罪はまたもなかった。翌31日には韓国メディアの記者たちに対し「捜査結果が出た後に立場を明かすのが順序である」との見解を明かした。

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