新MacBookは、「選びにくい機種」だった 現時点では万人受けしない

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MacBookは薄型にこだわるべく、キーボードにも手を入れている。新たにパンタグラフ式の浅いタッチのキーボードを採用している。

その人が慣れているモノが「使いやすい」という感覚的な問題もあるので一概に言えないが、これまでのMacBook AirやMacBook Proに慣れてきた人にとっては、しばらく違和感があるかもしれない。

キーボードのストロークは浅くなった

何となく、だんだんタッチが浅くなっていって、最終的には深さがなくなる、という世界もあるんじゃないか、とすら思ってしまう。

もう一つのインターフェイス、トラックパッドも進化を見せた。Apple Watchでは、Force Touch(強く押し込む)が認識できる仕組みだが、新しいMacBookにもこれが採用された。なお、同時にアップデートされたMacBook Pro 13インチRetinaディスプレイモデルにも採用されている。

押し込む動作を認識できるため、筆圧感知にも対応する。Appleはサインを書く様子を見せたが、太さや払いなどをトラックパッドで再現できるようになる。

加えて、こちらもApple Watchに内蔵されているTapTic Engineも内蔵。トラックパッドから指先へのフィードバックが行われるようになり、インターフェイスの新しい触感が加わるだけでなく、今後ユニバーサルデザインの機能としても活用していくことになるだろう。

現段階では、選びにくい機種

MacBookは、現段階においては、「万人向けのコンピュータ」と言い切ることはできない。新しいため全く普及していないUSB-Cのみをインターフェイスに採用したこと、Retinaディスプレイ搭載といえども15万円弱という価格からしか用意されていないことなどから、積極的には選びにくい機種といえる。

しかしアップルは、このノートパソコンが、向こう5年近くにわたって、「ノートパソコン」という存在のスタンダードであるという気合いで作ったことも確かだ。例えばiMacやMacBook Airは、実際に業界全体がそのトレンドを追いかけた経緯がある。

今回も、Intel Core Mプロセッサを搭載したコンピュータについては、同様のことができるはずだ。唯一の違いは、他のメーカーはiPhoneを作っていない、ということ。あるいはApple Watchも有していない、ということだ。

テクノロジーブランドから、ややラグジュアリー寄りのライフスタイルブランドへと変化しようとしているアップル。MacBookの成否についてすぐに答えを出す必要はないが、戦略上、意外と重要な製品になるのではないか、と考えている。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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