着物の手作りが一般人の想像以上に超繊細な裏側 見た目と機能の両面を実現する希少価値の高い技術

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その土地ならではの気候風土でしか生まれない着物としては、新潟県の麻織物、越後上布もユニークです。越後上布は、織り上がった後に真っ白な雪原に広げる「雪晒し」という工程を行います。初春の3月頃の晴れた日、真っ白な雪の上に約13mもある越後上布の反物を広げるのです。

雪にさらすことで、麻布の白色が際立ち、さらに美しい布になると言われています。その理由は、雪がとけるとき、オゾンまたは水素イオンが発生して麻の繊維を漂白するからと言われますが、今も研究過程とのこと。ですが、越後上布の作り手さんたちは、雪晒しをすることで、麻布の白色が際立つことを経験的に知っていたのです。

そして新品だけでなく、何度か着た越後上布も、雪晒しをすることで美しく蘇えらせることができるそうです。雪国だからこそ生まれた着物なのですね。

美しいだけではない機能性の高い伝統工芸の着物

こうして昔ながらの手仕事でつくられた伝統工芸の着物や帯は、見た目の芸術的な美しさはもちろんのこと、機能面でもいくつも良さがあります。

機械で作られたもののほうが丈夫なイメージがあるかもしれませんが、実は手仕事で作られた着物はとても丈夫です。結城紬や大島紬は何度も着て、水で洗う手入れをするにつれて、どんどん柔らかく、着心地が増していきます。親子3世代で、100年にわたり着続けることができます。数十年前に着られていたシンプルな男物の大島紬を、仕立て直して女性が着ることもできます。

また、結城紬を着た人たちは「結城紬はとても軽くてあたたかい、そして手触りが素晴らしい」といいます。大島紬は布の糸目がぎゅっと詰まった、つるんとなめらかな布なので、花粉や埃、動物の毛などもつきにくくなります。

私自身は祖母の形見の大島紬と、自分で選んだ泥染の大島紬を普段着に愛用しています。まるでオーダーメイドスーツのよう。軽いので一日着ていても疲れることがなく、立ったり座ったり思い切り動いても着崩れません。新幹線や飛行機の移動で長時間座っていても生地の張りはそのまま。ときには小雨に降られてしまっても、大島紬ならなんとかなる。奄美大島の大自然と人々の手で生まれた大島紬には、なんとも言えない頼もしさがあります。

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結城紬、大島紬、越後上布、西陣織、科布など日本各地にはそれぞれ、土地の風土に根ざしたユニークな着物があります。

こうした日本の伝統工芸品の着物は、独特の美しさで、世界的にも注目されています。ですが、実際には大変な手間暇がかかるため、市場に出ると高級品になります。奄美大島の大島紬ならば、一枚で数十万円、ときには100万円を超えることも珍しくありません。

「着物は高価だ」と言われてしまうこともよくわかります。ですが、関わる職人の方々の懸命さと、その方々の生活を想像できるようになると、伝統工芸の着物の価格の見方が変わるのではないでしょうか。

上杉 惠理子 和装イメージコンサルタント、「和創塾 ~きもので魅せる もうひとりの自分~」主宰

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うえすぎ えりこ / Eriko Uesugi

法政大学社会学部、一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了後、株式会社エステムを経て、星野リゾートに入社。担当した北海道のリゾート トマムの業績回復と会社の急成長を目の当たりにし、ビジョン·戦略·行動力があれば現実を変えられることを実感。自分を変えた着物の真の魅力を伝え、着物文化を次世代に受け継ぎたいと、2015年日本初の和装イメージコンサルタントとしてダブルワークから起業する。「難しい·苦しい·お金がかかる」と思われている着物を、「誰でもできる·身体に楽·高コスパ」で、女性ひとりひとりの魅力を引き出す勝負服として、コーディネートや着用シーンなどを提案する。

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