JR西日本「自動運転・隊列走行BRT」実際に使えるか 鉄道の閑散線区でそこまでの性能は必要ない?
交通業界ではバスの運転士不足が深刻な問題となっている。ドライバーレスが実現すれば、運転士を確保する必要がなくなる。また、隊列走行の実現により大量輸送も可能となる。東京大学発のベンチャー企業「先進モビリティ」が自動運転や隊列走行のシステムを構築するほか、ソフトバンクグループの「BOLDLY(ボードリー)」が車内監視、統括制御システム、日本信号が踏切・信号制御や行き違い信号制御などのシステムを構築する。
同じくドライバー不足に悩むトラック業界でも、新東名高速道路などでトラックの後続車無人隊列走行の実証実験が進められてきた。この実験では、先頭車の走行軌跡を後続する複数台のトラックを通信で電子的に牽引するが、自動運転・隊列走行BRTの場合は、後続車両が電子牽引されるのではなく、各車両が自律的に運転するという点で違いがある。
JR西日本の久保田修司鉄道本部イノベーション本部長は、「人口減少や少子高齢化といった社会課題には鉄道だけで太刀打ちできない。その地域に合ったようなモビリティサービスが望まれる」と話す。自動運転・隊列走行BRTはその選択肢の1つとして期待される。もちろん事業者側にとっては鉄道に比べ運行や整備のコストがかからないのも魅力だ。
2021年9月に実証実験を開始。「3台隊列走行BRTの目処がついたので、今回公開することにした」と、JR西日本鉄道本部イノベーション本部の不破邦博次世代モビリティ開発担当課長が話す。2023年度中に技術を確立し、2020年代半ばの社会実装を目指す。
国は一定の条件下で完全な自動運転を行う「レベル4」を2025年をめどに全国40カ所で実現する目標を掲げる。JR西日本のプロジェクトはこの動きを見据えたものだ。
総延長1.1kmのテストコース
このプロジェクトの実行に際し、JR西日本は野洲市内にコース総延長約1.1kmの巨大なテストコースを造った。JR琵琶湖線沿いにあり、「もともと車両基地の予備用地として確保していたが、今回の計画が持ち上がり、そちらで活用することにした」(不破課長)。道路上に一定の間隔で埋設された磁気マーカーを検知するほか、GNSS(衛星測位システム)も使って車両の位置を読み取る。
各車両にはフロント部分、床下、屋根上などに数多くのカメラやセンサー類が搭載され、前方にある対象物の形状や対象物との距離を識別する。また、前方車両との車間距離センシングも行い、隊列走行時の車間は10〜20mを維持し、停車時の車間は1〜3mとなる。今回の報道公開における走行速度は時速25km程度だったが、実際には最高時速60km程度を予定しているという。
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