広島県知事が主張「国はJRのあり方を議論すべき」 赤字線区の収支だけ公開しても意味がない

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インタビューに答える広島県の湯崎知事(写真:広島県)
JR西日本の赤字ローカル線30線区の収支状況の発表に端を発し、全国に危機感が広がっているローカル線の存続問題。広島県では芸備線や福塩線の一部区間や木次線が対象となり、しかし、広島県は鉄道路線維持の立場を表明。湯崎英彦知事は、鳥取県の平井伸治知事らとともに28道府県知事の連名で斉藤鉄夫国土交通大臣あてに鉄道をユニバーサルサービスとして位置づけることなどを求めて「未来につながる鉄道ネットワークを創造する緊急提言」を行った。
広島県はなぜ輸送密度が極端に低い芸備線の末端区間も含めて鉄道路線維持の立場を取るのか、話を聞いた。

芸備線の山間部は末端区間ではない

――なぜ芸備線全線での鉄道としての存続をうったえているのですか。

芸備線は、地方創生や街づくりの点からも重要な交通ネットワークであると考えている。芸備線があることが観光の目的となって来訪利用する方がいることや災害時における迂回ルートの確保等という点からも必要な路線である。

利用者が少なかったとしても地域での生活を営むためにそこにある公共交通機関に依存せざるをえない人は必ずいる。例えば通学や通勤、通院で利用している人がおり、鉄道網を維持することは交通弱者を支えるうえでも重要であると考えている。

また、注目されている芸備線の山間部の区間については末端区間という意識は持っていない。広島駅を起点とするならば終点の備中神代駅では伯備線に接続しており、岡山県や鳥取・島根県側に抜けることができることから重要な鉄道ネットワークの一部を形成していると考えている。鉄道はいったん廃止されてしまうと簡単には復活できないことから、鉄道をなくす議論については慎重に行うべきだ。

――広島県では可部線が廃線から復活しました。

可部線の末端区間である可部―三段峡間46.2kmが廃止されたのは2003年のことで、1998年に前年の輸送密度が492人であったことから、JR西日本から沿線自治体で構成される可部線対策協議会に対してバス転換の申し入れがあり、その後、利用促進、第3セクター化の検討を行ったが、結果として廃止されることになった。

廃止された可部―河戸間1.3kmの区間については市街地の中にあることから鉄道としての復活を望む声が大きく2017年に可部―あき亀山間1.6kmを復活開業させることになるが、短い区間であっても復活には相当な労力を要した。

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