広島県知事が主張「国はJRのあり方を議論すべき」 赤字線区の収支だけ公開しても意味がない

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――三江線のケースで感じた課題などはありますか。

鉄道が廃止となってしまった場合の代替交通については、路線バスであれデマンド型交通であれ、地元自治体が補助金を出しながら地元の交通事業者で運営を行うことになる。JR西日本から自治体に対しての支援金もあったが、鉄道の代替交通をそんなに長く支えられる金額でもない。

鉄道の存廃問題が表面化する地域は、県内でも人口減少が進んでいる中山間地域で財政力も脆弱な自治体が多い。そうした自治体が地方交通の維持のために補助金を出し続けることは今の仕組みでは厳しい。

――現在の制度についてはどう考えますか。

鉄道事業法では、事業者が届け出をすれば1年で鉄道路線を廃止できる。各地域で鉄道の活性化の取り組みを行っている中で、JRが鉄道をやめたいと言ったら地元が抵抗できずに廃止されるという仕組みは適切ではない。

鉄道路線の廃止は地域に与える影響が大きいことから、その判断は多面的な評価により行われるべきで、そのためには地元も国も関わって考えられるようなプロセスを経ることが必要だ。

市場原理になじまないものもある

――知事は経営学修士(MBA)を取得し、市場経済についての見識も深いと思います。市場原理に基づけば、JR西日本は経営資源を都市部に集中させて利潤を追求するほうが効率的です。

湯崎英彦(ゆざき・ひでひこ)●1965年生まれ。東京大学法学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)に入省し、国費留学でスタンフォード大学経営大学院(MBA)修了。会社役員などを経て2009年に広島県知事選初当選。現在4期目(写真:広島県)

そもそもの前提として、JRグループは市場原理に基づいて経営がされている会社ではない。ローカル線の維持については内部補助を前提としており、運賃・料金の設定についても国による規制が入っていることから、一般的な民間企業とは性格の異なる会社である。

ビジネスを考えるうえで、もちろん市場(マーケット)を考えることは大切であるし、市場の力に勝つこともできない。しかし、市場になじむものとなじまないものをしっかりと見極めたうえで、市場の力をうまく使っていくことが大切であると考えている。

特に防衛や福祉については市場になじまない公共的な性格の強いものであるが、鉄道についても地域住民の日常生活を支える重要な基盤であることから、公共的な性格の強いものであると認識している。

そもそも国鉄改革によって誕生したJRグループは、不採算路線も含めて維持ができるように制度設計されたものである。そうしたスキームが維持できなくなった以上は、国も政策の根幹として鉄道をどうするべきかの考え方を示すべきであり、新たな枠組みを作らなくてはいけない。

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