広島県知事が主張「国はJRのあり方を議論すべき」 赤字線区の収支だけ公開しても意味がない
JR西日本については、会社が安定した収益を確保できることを担保として、内部補助によって全路線の維持を図ることを前提に発足した会社である。しかしその一方で、株式の上場により同時に株主利益の追求も行わなくてはならないという相反する役割を背負わされている。
鉄道というインフラについてはその地域にとって自然独占的な性格のあるもので、同じ地域に何本もの線路が通っているわけではない。こういう話をすると、関西ではJRも阪急も阪神も大阪―神戸間で競合をしているではないかという指摘を受けるが、阪急沿線に住む人がわざわざ阪神に乗ることは少なく、客層の住み分けができていることから狭い範囲の地域であっても鉄道が自然独占的な性格があることに変わりはない。
電力自由化にしても、自由化を行い市場競争を導入する部分は小売りの部分であって、送電の部分に関しては市場原理で競争をしようという話にはならない。通信業界においても同じようなことが言える。
JR会社法に強制力はない
――通信業界においてもNTT東西では自然独占的な性格のある光回線を活用して、小売業者に対する卸売サービスを行っており、光回線インフラを活用して民間事業者が市場競争のもとで多様なサービスを展開できる環境が整っています。
電力会社では電気事業法、通信会社では電気通信事業法という法律の枠組みがしっかり整備されており、業界内において「公正な競争の促進」「円滑なサービスの提供」「利用者の利益を保護」するための仕組みが整っている。鉄道もそうしたインフラに近似する性格を持つが、JRグループについては、JR会社法という法律はあるもののこういった枠組みの整備は十分ではない。
JR会社法については、すでに株式上場を果たした本州3社とJR九州はJR会社法の改正により適用除外となっているものの、同法の附則によって国交大臣は上場会社を含めたJR7社のすべてに対して「利用者の利便の確保」「適切な利用条件の維持」「地域経済や社会の健全な発展の基盤の確保」のために事業経営に対して勧告や命令を発することもできることにはなっている。しかし強制力はない。
――携帯電話でもNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社により、市場競争で切磋琢磨をしているように感じます。一方のJRグループは地域ごとに独占的な事業エリアを与えられている点は通信業界とは異なります。
鉄道も公共性が高いものであるので、競争の枠組みをどこまでどういう風にやるのかという考え方を作る必要がある。鉄道業界の競争の枠組みのあり方そのものを問うような話をする人は今までいなかった。
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