JR西日本「自動運転・隊列走行BRT」実際に使えるか 鉄道の閑散線区でそこまでの性能は必要ない?

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連節バスの定員はカタログ値によれば119人。同じく、大型バスは87人、小型バスは36人だ。「最大で4台までの隊列走行が可能」(不破課長)。ということは、連節バスを4台つなげればおよそ500人を運べることになる。

速度は最高で時速60km程度、輸送量は最大で500人程度。ということは、自動運転・隊列走行BRTは鉄道と路線バスの中間的な位置付けとなる。「鉄道ではオーバースペックだが、バスでは足りないという場所が対象となりそう」(不破課長)。

自動運転・隊列走行BRTが、もし導入されるとしたら、どのような場所を走ることになるのか。赤字の閑散線区を多数抱えるJR西日本は、今年4月に1日の利用者数(平均通過人員)が2000人未満の線区についてその収支状況を公表した。国も平均通過人員1000人未満の線区について、今後のあり方を鉄道会社と自治体の間で協議するよう促している。

この流れを踏まえると、自動運転・隊列走行BRTは、赤字の閑散線区を廃止した後の代替交通と捉えることができるが、逆に利用者が少ない路線であれば、1台のバスに置き換えれば十分であり、隊列走行の必要はないように思える。

日中は利用者が少なくても朝夕は高校生の通学需要が大きいというケースもあるが、JR九州の日田彦山線BRTは利用状況に応じて小型バスと中型バスを使い分けることで対応する。隊列走行のような複雑な技術を導入する考えはない。

開発中の技術要素の一部が廃止路線の代替交通に使われる可能性があるにせよ、もし、自動運転・隊列走行BRTの特性を最大限に生かすのであれば、赤字ローカル線の今後のあり方に向けた議論と自動運転・隊列走行BRTの開発は切り分けて考えたほうがいいだろう。

特性を生かせるのは「分岐するルート」

では、自動運転・隊列走行BRTの特性が十分に生かされるのはどのようなケースか。「たとえば、本線に支線が合流したり、行き先が分岐したりする場合が考えられる」というのがJR西日本の説明だ。

利用者の多い本線は連節バスが運行し、別の区間を走っていた小型バスが途中駅で合流する。あるいは隊列走行で出発した後、行き先が分岐する途中駅でそれぞれのバスが分かれて走行するといったケースだ。バスの種類も連節から小型までそろえておけば、さまざまなニーズに対応できる。ただ、これだけ複雑なシステムは地域の自治体との連携が欠かせない。将来の街づくりに組み込んで考える必要がある。

JR西日本は「自動運転・隊列走行BRTの展開は自社エリアに限らない」としており、全国どこでも実現可能という。はたして、最初に導入するのはどのエリアか。鉄路を置き換える形で実現するのか。それとも、道路の一部を専用道に置き換えるのか。いずれにしてもこの新しい交通システムが全国に普及すれば、日本の公共交通のあり方も大きく変わるに違いない。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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