マンション購入、知らないと後悔する「異変」の正体 見落としがちな管理費と修繕積立金のカラクリ

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次に修繕積立金について見ると、管理費をほぼ値上げしていない中古物件でも修繕積立金は2010年に1m2当たり100円ほどだったものが、2022年には180円ほどになっている。8割の値上がりである。

最大の要因は建築費の高騰にある。大規模修繕の主たる業務は建設会社が行う。2012年の第2次安倍政権発足以降、震災復興や公共工事の復活や東京オリンピック開催が決まり、建築コストは大幅に上がった。同じ建設会社が行う業務であるため、大規模修繕の当初の想定費用は大幅に上昇し、当初の積立金では賄えないからこその値上げではある。

要約すると、中古マンションでは管理費はサービスレベルを下げて費用を維持し、修繕積立金は値上げしている。このことに私は違和感を禁じえない。というのは、管理サービスのレベルダウンは生活の質を落とすことになるのに、大規模修繕は当初の計画を守っても資産価値が上がることはないからだ。私なら、管理費は多少上がってもサービスレベルをなるべく保ち、修繕積立金はなるべく増額を避けて最小限の投資ですませたい。

新築の一部で修繕積立金が下がっているカラクリ

修繕積立金については、もう1つ異変がある。新築マンションのm2単価が一部の物件で下がっていることだ。なぜか。

そもそも修繕計画に対して積立金が十分な設定になっている新築マンションはないに等しい。なぜなら、販売をする際に管理費と修繕積立金の2つのランニングコストが高いと買える人が少なくなり、販売にマイナスの影響が出るからだ。毎月の支払い額=住宅ローンの月返済額+管理費+修繕積立金であり、これが1万円高いと35年で420万円高い物件を買っているのと同じになる。

実は管理費を新築時に低く抑えることは、管理会社との取り決めでやりにくい。とくに大手マンションデベロッパーの場合、管理を委託するのがグループ内の管理会社になるので、グループの収益を圧迫することになるから、管理費は現状の適正価格に設定せざるをえない。

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