日経平均株価の底打ちを示唆する「ある重要指標」 米国が「良い景気後退」になるかも見極めよう

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また機械受注統計において、半導体製造装置の受注動向を反映する「電子計算機等」の動向も注目される。8月の機械受注統計によると、電子計算機等の受注額は前月比マイナス12.0%(筆者作成の季節調整値)と2カ月連続の減少であった。

依然、高水準にあるとはいえ、前年比伸び率はマイナス13.9%と2カ月連続でマイナス圏に沈んでおり、市況悪化が浮き彫りとなっている。世界半導体売上高の伸び率が鈍化する中、半導体メーカーが設備投資を控える動きが広がったものと考えられる。

そしてこの電子計算機等(半導体製造装置)の受注額も長期的に日経平均株価との連動性が認められている。過去の推移を振り返ると、半導体製造装置受注額が「前年比マイナス」に突入したタイミングは株式の底値拾いの好機になってきた。

仮に半導体市況の最悪期脱出となり、広義半導体銘柄の業績下振れリスクが後退した場合、日本株は上昇基調を強めるのだろうか。そのカギを握るのは、やはりアメリカ株の動向であろう。2022年に入ってから、ナスダック総合指数が30%超の下落に見舞われる中、これまで日本株は底堅さを保ってきたが、さすがに一段と下げ足を強めるようだとその下落に巻き込まれる可能性もある。

ここも逆張り的な視点で考えてみると、アメリカ株の反転上昇ないしは下げ止まりに必要なのは「良い景気後退」であろう。これは景気後退を示す経済指標がFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の政策態度をハト派方向に傾斜させることを通じて、株価の追い風になるという考え方に基づいている。

アメリカ景気の先行指標として重視すべき指数とは?

その点、アメリカ景気の先行指標として代表的な存在であるISM製造業景況指数が重要であると筆者は考えている。9月に50.9まで低下し、すでにフシ目の50割れが視野に入っている同指数が12月までに50を割れるようなことがあれば、FRBの政策態度に一定の影響を与えるだろう。

同指数の先行指標として有用なフィラデルフィア連銀製造業景況指数とNY連銀製造業景況指数は10月に強弱まちまちとなり、10月ISM製造業景況指数が50をわずかに上回る現在の水準を維持することを示唆した。FRBの金融引き締めによって住宅市場を中心に広範な経済活動が減速していることを踏まえると、11月分(12月2日公表)が50以下の領域に転落することは十分に考えられる。

もちろんインフレ退治を最優先課題とする現在のFRBが「ISM製造業の50割れ」をもって金融引き締めを直ちに停止するとは思えないが、金融引き締めの度合いを調整する材料としては十分だろう。具体的にはISM製造業の50割れが利上げ幅縮小の理由になりうると筆者は考えている。

そうなった場合、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)の予想は安定し、長期金利の上昇圧力は一服すると予想され、そうした下で株価は安定化に向かうと期待される。市場参加者はISM製造業の50割れを「良い景気後退」と見なし歓迎するのではないか。その場合は「日経平均株価3万円回復」に向けた素地が整う。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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