日経平均株価の底打ちを示唆する「ある重要指標」 米国が「良い景気後退」になるかも見極めよう
筆者は、日本株を予測するうえで半導体市況を重視している。半導体や半導体製造装置を直接手がける企業の存在感は、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)といった株価指数においてさほど大きなウェートを有するわけではない。だが、電子部品・デバイス、化学、精密といった関連企業を含めた「広義半導体」でみれば、そのインパクトは大きくなり、結果的に日経平均株価と連動する傾向にあるからだ。
半導体市況は「片道」2年程度で変動を繰り返すシリコンサイクルがよく知られている。2022年に入ってからはコロナ禍における特需が剥落するなかで市況は悪化し、株式市場における半導体ブームも過ぎ去った。だが、ここへ来て「底」が近づきつつあることを示すデータが散見されるようになった。現在の半導体市況は株価の底を拾うという点において重要なポイントにさしかかっていると考えられる。以下で指標を確認していく。
重要な「出荷・在庫バランス指標」が底入れ
日本企業が手がける広義半導体の市況を示す指標としては、鉱工業生産指数や機械受注統計がある。まず鉱工業生産指数については「電子部品・デバイス工業」という業種の動向が注目される。ここには、いわゆる半導体関連銘柄が多く含まれる。
8月の電子部品・デバイス工業の生産高は前月比マイナス6.3%と2カ月連続の大幅減産となり、3カ月平均値は明確に下方屈折し、前年比ではマイナス8.5%まで減少した。生産指数の水準は101.2と直近ピークを付けた3月の119.2から約2割も減っている。
他方、この間に生産者が保有する在庫は積み上がり、9月は前年比プラス11.9%と過剰感が意識されるレベルにある。この2つの数値からは、積み上がった在庫が適正水準に減少するまで生産を減らすという典型的な調整局面にあることが容易に想像できる。
次に注目したいのは出荷・在庫バランスだ。この指標は出荷(あるいは生産)と在庫について、それぞれ前年比変化率を算出し、その差分を取ったものである。それがプラスなら出荷(生産)の伸びが在庫の伸びを上回っていることを示す。端的に言えば好況である。
コロナ禍において半導体需要が高まっていた2021年4~6月期においてその数値は40ポイント台後半であった。他方、直近のそれはというとマイナス20.9ポイントと大幅なマイナス圏で推移している。1年半も経過しないうちに市況が大きく悪化したことがわかる。ただ、ここで出荷・在庫バランスを細かく見ると、5月にマイナス41.0ポイントを記録した後、依然として大幅マイナスながら底を打っていることに気がつく。
ここで最も重要なことは、この数値が日経平均株価の前年比変化率と長期的に一定の連動性を有してきたということだ。これを踏まえると、現在は株価の大底を拾うという意味において好機が近づいているように思える。
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