着物が「一生ムダなく付き合える服」と断言する訳 丈夫で長持ち、仕立て直しも染め替えもできる

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1枚の着物を長く着続けるための方法に、染め替えがあります。落ちないようなシミがいくつもついていたり、着物の色が好みに合わなかったりするときに行う方法で、上から濃い色を重ね染めすればシミを隠すことができますし、染め替えをすることで好きな色に変えることができます。

染め替えができるのは、絹の着物だからこそ。絹は蚕の繭からとるタンパク質の天然繊維です。同じくタンパク質でできている髪の毛を脱色やカラーリングするようなイメージで、着物の色を染め替えることができるのです。

私もとても色鮮やかなピンク一色の着物をいただいたことがあります。色は私に似合うピンクではなかったのですが、生地そのものはとても良質なものだったので、ピンクを脱色して淡い黄緑色に染め替えました。もともとピンクの着物だったとは、想像もつかないほど色がかわりました。

年齢とともに着たい着物の色も変わっていきます。私の染め替えた黄緑色の着物は、還暦の60歳を超えた頃に落ち着いた濃い緑に染め替えようと考えています。そうして一生を着続けることも、着物ならできるのです、

江戸時代から続く、布を最後まで使い切る日本の習慣

こうして着物は何度も洗ったり仕立て直したりして着続けるための、日本の先人たちの知恵が詰まっています。特に江戸時代は着物も含め、使うもの全てを循環させるリサイクル社会が確立していたと言われています。

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古着屋さんが軒を連ね、リユースの着物が循環していました。着物として着られなくなったら解いて、座布団や布団、袋ものにし、赤ちゃんのおしめや雑巾としてボロボロになるまで布を使い切っていました。江戸の町では最後は燃やして燃料として使い、残った灰は「灰買い」という業者が回収し、土壌改良等に使われたのです。

私たちも仕立て直しても染め替えても着物として着続けられそうもなければ、解いて帯にすることもできます。帯揚げや半衿にすることもできます。下駄の鼻緒に作り直したり、バッグにしたりすることもできますし、洋服にリメイクもできます。着物は布の寿命がくるまで使い切ることができるようになっているので、着物をどう活かしどう切るか、私たちのアイデア次第です。

上杉 惠理子 和装イメージコンサルタント、「和創塾 ~きもので魅せる もうひとりの自分~」主宰

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うえすぎ えりこ / Eriko Uesugi

法政大学社会学部、一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了後、株式会社エステムを経て、星野リゾートに入社。担当した北海道のリゾート トマムの業績回復と会社の急成長を目の当たりにし、ビジョン·戦略·行動力があれば現実を変えられることを実感。自分を変えた着物の真の魅力を伝え、着物文化を次世代に受け継ぎたいと、2015年日本初の和装イメージコンサルタントとしてダブルワークから起業する。「難しい·苦しい·お金がかかる」と思われている着物を、「誰でもできる·身体に楽·高コスパ」で、女性ひとりひとりの魅力を引き出す勝負服として、コーディネートや着用シーンなどを提案する。

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