もし、着物を着たいと思ったら購入するよりも前に、自分の母親や祖母に着物が家にないかどうか聞いてみることから始めてみる方法があります。幸運にも着物があった場合には、実際に着ることで、SDGsのひとつ「つかう責任」を果たすことにつながります。
1枚の着物を長く着続ける、手縫いで仕立てる知恵
着物は現在でも、手縫いで仕立てることが基本です。着物を縫い仕立てる専門技術を持った人を和裁士といい、和裁技能士という国家資格もあります。洋服のほとんどがミシン縫いですから、なぜ着物では手縫いが残っているのか、疑問に思われるかもしれません。
着物の生地は、幅約40センチメートル、長さ約13メートルの細長い反物です。これを身頃左右1枚ずつ、袖を左右1枚ずつ、衽も左右1枚ずつ、2枚の衿と合計8枚の四角い布に切り分けて仕立てます。
この布を切り分けるとき、着物では余った部分を切り落として捨てることがありません。袖の長さが短くて済む場合、余った布は縫い代に折り込みます。細身の人の場合、脇の布も余れば縫い代に全て折り込みます。身丈の布が余る場合は、お腹周りを折り返して縫い込む「打ち揚げ」をつくります。
こうして余った布を縫い込んでおくことで、袖の長さを伸ばしたり、丈を伸ばしたり、小さな着物を大きくすることができるのです。逆に大きな着物を小さくすることももちろんできます。一方で洋服は人の身体に合わせて立体的につくるため、裁断時に布の最大20%を切り落とし、捨てざるをえないそうです。
仕立て直してサイズ変更ができるように、着物は布を裁断しますが、縫うときに手縫いであることも大事な点になります。もしミシン縫いをしてしまうと、この仕立て直しができなくなるのです。ミシンは上下2本の糸で絡ませて縫うので、解くのに大変な手間がかかってしまうのです。また、太いミシン針の穴が布に残ってしまう。一本の糸を使い手縫いで直線縫いをした着物は、糸の端を切って引っ張ればスッと簡単に解くことができ、針穴は目立ちません。
着物がその天寿が全うするまで活用されるためには、仕立て直しができることが重要で、そのためにも手縫いの仕立てが欠かせないのです。
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