短期不安定でも「日米の株価は年末高」と読む理由 日本株は日銀短観から「明るい兆し」が見える

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詳しくは当該コラムをご参照いただきたいが、その主張の骨子は、アメリカなどでインフレをもたらしてきた3つの主要因「国際商品市況の上昇」「生産や物流の混乱」「賃金の上昇」については、徐々に緩和に向かっているという点だ。

直近の「市況」「生産・物流」「賃金」も沈静化

先週の出来事だけを取り出して、そうした諸点を確認すると、国際商品市況のうち原油価格については、OPEC(石油輸出国機構)加盟国と非加盟国で構成されるOPECプラスは、11月から日量200万バレルの減産を行う方針を決定した。

このため、原油の国際指標であるWTI原油先物価格は1バレル=90ドルを超えてきた。産油国としては、70ドルを割れるような価格は原油輸出収入を減少させるため、好ましくないと考えている、というところだろう。

だが逆に原油価格が再高騰することは、購買側が買い控え、かえって販売数量面から原油の輸出収入金額を圧迫するおそれが生じうることから、産油国も望んでいないだろう。また、エネルギー以外の、例えば銅や小麦などの価格は落ち着いて推移している。

生産や物流の混乱度合いは、前回のコラムではニューヨーク連銀が算出している「グローバルサプライチェーン圧力指数」で解説したが、前述の最新のISM製造業指数の内訳を見ると、受注残指数は8月の53.0から9月は50.9に低下し(受注に生産が追いついてきている)、生産者の出荷(顧客から見た入荷)の遅れ度合いを示す入荷遅延指数は、同じく55.1から52.4に低下して、生産の巻き返しで納期に間に合うことが増えていることが示された。

また、賃金の先行きを示唆する雇用関連の諸統計では、ISM製造業指数の中の雇用指数は、同様に54.2から48.7に低下した。

冒頭で簡単に触れた求人数はまだ高水準とはいえ、7月の1117万人から8月は1005万人に減少した。雇用統計における週当たり労働時間が前年比での減少基調にあることを前回のコラムで述べたが、週末に発表された9月分の雇用統計でも労働時間の前年比はマイナスだった。

このように、筆者が指摘してきた実態面の大きな底流は、ほぼ見通しに沿って展開している。また、これまで述べたように、複数の異なった統計が同じ事実を示唆している場合は要注意だ。市場が何を取り上げて騒いでいても、先行きを指し示す複数のデータが一致して語っていることは、たいがい真実を示している。

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