短期不安定でも「日米の株価は年末高」と読む理由 日本株は日銀短観から「明るい兆し」が見える

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すると、すぐではないだろうが、「じわじわと投資環境(実態面)が改善し、それが日米など主要国の株価を年末に向けて押し上げていく」という筆者の展望は、維持すべきだと判断している。

繰り返しになるが、短期的にはそうした実態面の改善とは無関係に、市況は上下にいくらでも荒れよう。そうした繰り返しが数カ月続き、年末に至って過去を振り返ると、「基調としては株価は上昇していた」ことがわかるという展開になるのだろう。

日銀短観からは日本株についての明るい兆しが見える

当コラムでは、アメリカについて述べることが多くなっているが、日本の経済や企業の状況についても触れてみよう。3日に公表された9月調査の日銀短観を見ると、さまざまな明るい兆しがうかがえる。

「いや、業況判断DIがはかばかしくない」とのツッコミはあろう。ただ、価格判断DIの動きを注目したい。

この価格判断DIは、企業に足元3カ月間の価格変化について尋ねるもので、価格が上昇していると答えた企業が全体に占める比率から、価格が下落していると答えた企業の比率を引いているものだ。これは実際の価格上昇率を表すものではないが、企業関連の価格の動向を捉える1つの指標だと考える。

この価格判断DIには、企業が仕入れている物品などの価格を示す仕入れ価格判断DIと、企業が販売している製品やサービスの価格を示す販売価格判断DIとがある。過去においては、国際商品市況の上昇などで仕入れ価格判断DIが大きく上がる局面では、企業は販売価格を引き上げることをためらって販売価格判断DIがそれほど上がらず、企業収益率への圧迫が生じていたことがうかがえた。

しかし最新の9月調査にかけては、仕入れ価格がまだ高水準で推移はしているが上昇一服となっている一方、販売価格への転嫁が進みつつあり、今年3月調査時点を最悪期として、企業収益を取り巻く環境は改善に向かいつつあることが推察できる。

このほか、最新の日銀短観では、大企業の売り上げや利益の見通し、設備投資計画なども上方修正されており、日本株の上昇要因が多く見て取れる。

(当記事は会社四季報オンラインにも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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