定年後に「風呂の中で泣いている」66歳男性の告白 「上から目線なアドバイス」のせいで…

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■鴻上さんの答え

有閑人さん。よく、相談してくれました。立派な学歴と優良な会社に勤めた有閑人さんにとって、自分が弟・妹・妻にうとんじられている、ということを認め、お風呂で泣いていることを告白するのは、とても勇気がいったでしょう。

鴻上尚史さん(撮影:朝日新聞出版写真映像部・小山幸佑)

過去の記事で、親身に相談に乗っているつもりだった友人から、「いつも上から目線だった」と言われて、絶交されて落ち込んでいる女性の相談に答えました。

自分では世話好きだと思っている女性には、じつはありがちなことだと思っています。相手のことを思っているつもりで、自分の考えを無意識に押しつけている場合です。

そして、男性は、有閑人さんのケースが多いと思っています。

女性のようにあれこれと世話をするのではなく、「もっとガンバレ」と説教・激励・指導するパターンです。

勝ち組とまで言わなくても、自分がちゃんとやってきたとそれなりの自信を持っている男性に、この傾向が強いです(女性の場合は、じつは、自分に自信のない人の方が自分の意見を押しつける傾向が強くなると、僕は思っています)。

がんばってもできないことは、たくさんある

もちろん、自分はよかれと思ってアドバイスします。女性の場合は、あれこれと相談に乗ったり、色々と世話をしますが、男性の場合は、ただ教訓を語ったり、アドバイスしたり、説教するだけの場合が多いです。だいたいは、ふがいないと怒ったり、強く注意するのです。

根拠は、「自分はちゃんとやってきた」ということですね。自分がちゃんとできたんだから、あなたもしなさい。自分はがんばって努力したから、あなたも努力しなさい。きっとできるはずだ、それができないのは、あなたの努力が足らないからだ、という思考の流れです。

でもね、有閑人さん。がんばってもできないことはたくさんあるのです。

僕は小学校から、跳び箱とマット運動、鉄棒が苦手でした。「蹴上(けあ)がり」という鉄棒の技が、体育の課題に出て、3週間ほど放課後、毎日練習しました。奇跡的に何回か成功しましたが、体育のテストの時はできませんでした。

体育の先生は「努力が足らない」と怒りましたが、僕は毎日、1時間は鉄棒にしがみついていました。

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