フランクリンは晩年、自伝の中で、謙虚な態度で話す習慣が、いかに効果的であったかを振り返っている。
「この習慣によって (私の誠実な性格に次いで)私は新たな制度の設立や古い制度の変更を提案したときに、まわりの人たちに大きな影響を与えられたのだと思う」
エゴよりも「真実」を大切にした大統領
歴史上の人物の中から、論破をやめたもう一人の偉人を紹介しよう。第16代アメリカ合衆国大統領、エイブラハム・リンカーンだ。
1863年、ビックスバーグを攻略しようとして数カ月間も失敗を重ねていた北軍の最高司令官ユリシーズ・グラントは、ある大胆な作戦を5月に実行する計画を立てた。自軍の動きを南軍に察知されないようにしながら、意表を突く方角からこの都市に攻め入るというものだ。
リンカーン大統領は、「この作戦は危険すぎる」と懸念を表した。その2カ月後の独立記念日、グラントの軍はビックスバーグの陥落に成功した。
リンカーンは勝利の知らせを聞き、直接会ったことはなかったグラントに手紙を書いた。
「親愛なる将軍へ」という書き出しで始まるこの手紙で、リンカーンは感謝の気持ちをつづった後に、こう続けている。
「私は、貴殿の軍はミシシッピ川を下ってバンクス将軍のもとに行くべきだと思っていた。軍がビッグブラックの東側を北上したと聞いて、それは間違いだと思った。しかし今、自分が間違っていたことを認めたい」
この手紙を読んだ側近者は、まさにリンカーンの人柄を表していると語ったという。リンカーンはいつでも、自分の考えに落ち度があればためらわずに相手に伝えることができた。
われわれの日常生活においては、自分が間違っていたことに気づけるだけでも上出来だ。
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