トルコは第3次世界大戦回避の立役者になれるか 世界を駆け回るエルドアン大統領の胸の内

✎ 1〜 ✎ 94 ✎ 95 ✎ 96 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

トルコは、かつてのユーゴスラビアのチトーや、インドのネルーのように、中国、ロシア、アメリカといった超大国を手玉にとりながら駆け引きをし続けるであろう。ウクライナ戦争の平和交渉においても、またウクライナの小麦輸出においても、エルドアンは調停役としてかつてのオスマントルコが担っていた大国の役割を果たしている。また、東西対立においても、一方で西側、他方で東側と、ある意味八方美人的外交を繰り返している。

2022年9月の国連総会で、各国の政府代表の演説が行われたが、今回の代表演説の特徴は、米ロが対立する東西陣営のなじり合いよりも、アフリカなどの第三諸国の代表の演説にあった。特徴的だったのは、第三諸国の代表がこれまでの西欧による支配、ドル体制や軍事介入に対して極めて批判的であったことだ。

期待されるトルコの外交努力

エルドアンもそれをすぐさま察知し、こうしたアフリカなどの貧しい地域を代表するという立場をとっていた。それと同時に、新たな対立を深める東西対立の交渉人としての立場も明確にしていた。インフレと債務負担で苦しむトルコだが、東西対立の挾間にいて重要な役割をもつ大国であることも忘れてはいけない。

エルドアンは必要とあれば、世界中あちこちに交渉に行く。今世界を見渡しても、最もフットワークが軽い大統領ともいえる。かつてのギリシヤ・ローマ、そしてビザンツ、オスマントルコといったつねに世界をリードしてきた国の末裔トルコの動きを、東西対立の狭間で自らの利益だけをかすめ取る軽業師の動きだと考えることはできない。

2000年以上にわたる世界の雄としてのトルコの外交努力には期待したいものだ。エルドアンには、インドのモディ首相と同様、世界が最悪の第3次世界大戦に進まないよう、米中ロの対立を緩和する重要な役割を担ってほしい。

的場 昭弘 神奈川大学 名誉教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

まとば・あきひろ / Akihiro Matoba

1952年宮崎県生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。日本を代表するマルクス研究者。著書に『超訳「資本論」』全3巻(祥伝社新書)、『一週間de資本論』(NHK出版)、『マルクスだったらこう考える』『ネオ共産主義論』(以上光文社新書)、『未完のマルクス』(平凡社)、『マルクスに誘われて』『未来のプルードン』(以上亜紀書房)、『資本主義全史』(SB新書)。訳書にカール・マルクス『新訳 共産党宣言』(作品社)、ジャック・アタリ『世界精神マルクス』(藤原書店)、『希望と絶望の世界史』、『「19世紀」でわかる世界史講義』『資本主義がわかる「20世紀」世界史』など多数。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事