トルコは、かつてのユーゴスラビアのチトーや、インドのネルーのように、中国、ロシア、アメリカといった超大国を手玉にとりながら駆け引きをし続けるであろう。ウクライナ戦争の平和交渉においても、またウクライナの小麦輸出においても、エルドアンは調停役としてかつてのオスマントルコが担っていた大国の役割を果たしている。また、東西対立においても、一方で西側、他方で東側と、ある意味八方美人的外交を繰り返している。
2022年9月の国連総会で、各国の政府代表の演説が行われたが、今回の代表演説の特徴は、米ロが対立する東西陣営のなじり合いよりも、アフリカなどの第三諸国の代表の演説にあった。特徴的だったのは、第三諸国の代表がこれまでの西欧による支配、ドル体制や軍事介入に対して極めて批判的であったことだ。
期待されるトルコの外交努力
エルドアンもそれをすぐさま察知し、こうしたアフリカなどの貧しい地域を代表するという立場をとっていた。それと同時に、新たな対立を深める東西対立の交渉人としての立場も明確にしていた。インフレと債務負担で苦しむトルコだが、東西対立の挾間にいて重要な役割をもつ大国であることも忘れてはいけない。
エルドアンは必要とあれば、世界中あちこちに交渉に行く。今世界を見渡しても、最もフットワークが軽い大統領ともいえる。かつてのギリシヤ・ローマ、そしてビザンツ、オスマントルコといったつねに世界をリードしてきた国の末裔トルコの動きを、東西対立の狭間で自らの利益だけをかすめ取る軽業師の動きだと考えることはできない。
2000年以上にわたる世界の雄としてのトルコの外交努力には期待したいものだ。エルドアンには、インドのモディ首相と同様、世界が最悪の第3次世界大戦に進まないよう、米中ロの対立を緩和する重要な役割を担ってほしい。
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