2018年にできたイスタンブールの北、黒海に臨む位置にある新国際空港は世界最大の空港の1つだ、アメリカのシカゴやダラスの空港よりも大きいといわれ、いまだ建設中で完成は10年後ということである。これほどの規模の空港をつくる力があるのかどうは疑問だとしても、エセンボーア国際空港も含めあちこちでインフラ投資が行われ、高層ビルもあちこちで建設され、一種のバブルが演出されている。
しかし、こうした海外借款による大規模プロジェクトは、ある意味危険な賭けでもある。19世紀からメキシコやギリシヤなどの諸国は、欧米とりわけ英仏米から借りた金が累積し、つねにデフォルトの要因がつくりだされた。それが政情不安と、欧米への従属化を生み出してきた。帝政ロシアでさえ、その構造の中で破綻し、ソ連政権が生まれている。ソ連は当然ながら海外からの債務返済を拒否したが、1991年のソ連崩壊以後、かつての借金を返さざるをえなくなっている。
EUの東欧や南欧への拡大は、あり余った資本をそれらの地域に貸し付けることで経済発展を創出し、短期的な繁栄をもたらしてきた。そもそも、戦後アメリカによって生まれたドル基軸体制、すなわちIMF(国際通貨基金)体制はまさにドルによる世界支配と結びついていた。
マーシャルプランによるドルの支援は、その国を発展させると同時に、その国をドル支配の中に完全に組み込むことを意図していた。ドルがなければ何もできないというのは、まさにそういうことだ。戦後、アジアやアフリカの国々も独立していくのだが、ドル支配から脱却できず、つねに西欧に対して債務を抱え、西欧による経済支配、そして政治支配を受け続けねばならない状態が続いている。
東側へ接近、トルコの方向転換?
トルコが、サマルカンドの非西側諸国の会議に出席し(オブザーバーだとしても)、これらの国に接近したことは、ドル体制の中心国アメリカの怒りをすぐさま買った、トルコの銀行に対して、ロシアの銀行決済システム「ミール」の使用を禁止するよう命令が下された。続ければ、ドル体制から追放されることになる。またロシアからの武器の輸入に対しても、厳しい処置が取らされるだろう。
トルコが東側に接近するということは、アメリカが西側の領地を失うだけでなく、地中海とアフリカを失うことを意味している。巨大な力として拡大しつつある中国とロシアを中心とする新しい動きに対し、アメリカは西側を守るために必死の制裁を行うだろう。
しかし、エルドアンはあえて2つの世界を両天秤にかけながら、東西対立をうまく利用していくという、したたかさをもつ人物でもある。オスマントルコの歴史から見て、ロシアと懇ろになることはないだろうし、また気位からいって彼らからすれば新興国のアメリカなどを信頼することもないだろう。
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