「ミシンのブラザー」知られざる5段階変身の全貌 基盤技術を横展開、不振事業・失敗例も諦めない
長引くコロナ禍で事業環境が変わり、従来の強みが機能しなくなった会社も多い。それは歴史の長い老舗企業でも同じだ。
だが、中には時代の変化とともに事業構造を変えて業績を拡大した会社もある。創業114年の「ブラザー工業」(1908年創業)はそのひとつだ。
一定以上の世代にとっては「ミシンのブラザー」のイメージが強いと思う。昭和時代に競い合ったミシンメーカーの多くは、倒産(リッカー)したり、規模を大幅拡大していなかったりするが、ブラザー工業の業績は連結で7000億円規模となっている。
なぜ、こうした変身ができたのか。今回は平社員時代からアメリカにおける同社の事業拡大を担い、経営者として事業構造の変革を進めてきた小池利和会長に話を聞いた。
業種や規模が違えども、ビジネス環境激変時代を生き抜くためのヒントが詰まっていた。
売り上げの85%を海外で稼ぐ
「2021年度の業績は連結売上高が約7109億円、営業利益は約855億円でした。現在のブラザーは全社売り上げの85%を海外で稼いでおり、そのため為替相場にも左右されますが、2022年度の売上高は約7750億円を予想しています」
小池氏はこう語る。現在の業務執行は佐々木一郎社長が担うが、2007年から2018年まで社長を務めた小池氏は、社業の主要な数字を把握して取材時に説明するのが持ち味だ。
「なぜ、企業規模が大きくなっても変身できるのか?」と尋ねてみた。
「まず大きいのは社風でしょうね。昔からブラザーは自由闊達な雰囲気で、社員の提案を受け入れて新事業を進めさせてくれる気風がありました。現在の主力であるプリンターも、誕生のきっかけは1980年代初め、電子タイプライターの技術を使えば安価なプリンターを作れるという、先輩技術者のひらめきから生まれたのです」
そのプリンティング(印刷)・アンド・ソリューションズ事業の売上構成比は約6割。国内の複合機・プリンターでは「プリビオ」や「ジャスティオ」ブランドで展開しており、キヤノン、エプソンに次ぐ業界3位メーカーだが、海外で稼ぐのだ。
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