「ミシンのブラザー」知られざる5段階変身の全貌 基盤技術を横展開、不振事業・失敗例も諦めない

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1年ほど耐えた後、スマホの世界的な普及もあり、事業は急回復した。

実はブラザーの歴史と向き合うと、「すれすれで助かる」「辛抱強く待ち続けて追い風が吹く」事例も多いのだ。これもまた、結果的に同社の成長を支えていくのが興味深い。

ブラザー工業の工作機械
海外からの引き合いも多いという工作機械(写真:ブラザー工業)

1986年に発売した「TAKERU(タケル)」という、世界初のパソコンソフト自動販売機がある。利用者がお金を投入するとホストコンピューターに登録されたソフトを検索し、持参したフロッピーディスクにデータを書き込む仕組みだった。

今では理解できる技術だが、「ウィンドウズ95」が日本に上陸する9年前の発売。あまりにも時期尚早で、全国のパソコンショップなどに約300台を売っただけで撤退した。

しかし「TAKERU」を開発した安友雄一氏は経営陣を説得して撤退費用の予算を勝ち取り、その費用で密かに新たな通信インフラを構築。これが1992年、同社グループが展開する通信カラオケ「ジョイサウンド(JOYSOUND)」に結びついたのだ。

少し前まで成長分野だった通信カラオケも、コロナ禍では一気に縮小。だがブラザーは事業を手放す気はない。それは過去の歴史が証明しているだろう。

ちなみに「TAKERU」開発当時の安友氏は30代前半。撤退後も左遷されることなく数年前に定年を迎えたが、専門職の最高位である「プリンシパル」を務めたという。

業態転換時に「不採算事業」を見直す

これまで120年近い歴史の中で、ブラザーは大きく分けて4度の変身をしながら、会社を発展させてきた。現在は5度目の変身中だが、時系列に記すと下表のようになる。

(外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

ブラザー工業の変身と内容
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