凄惨な「ケンカマッチ」、選手に問われる責任 格闘技試合中の大ケガ、傷害罪が成立する?
「一般的には、スポーツ競技中の事故については、刑事上の責任を負いません」
どういうことだろうか?
「たとえば、格闘技の試合中に相手を殴ることは、ひとまず、傷害罪や業務上過失致傷罪の構成要件に該当します。しかし、格闘技の試合で相手を殴ることは、刑法35条の『正当行為』にあたり、違法性がなくなるため、犯罪にはならないと考えられています」
つまり、形式的には犯罪行為にあたる場合でも、スポーツ競技中の「正当行為だった」とみなされれば、犯罪にはならないということだ。
「ただし、裁判所の判断をみると、その事故の加害者競技者の行為態様によっては、傷害罪などが成立する可能性があります。たとえば、空手の練習と称して一方的に殴る蹴るの暴行を加えて相手方を死亡させた事件では、傷害致死罪の成立を認めています」
プロレスは「もともと激しい身体接触がある競技」
ケースバイケースということだが、今回の試合はどうだろうか?
「今回の件は、なかなか難しい問題です。試合ビデオを見ると、多くの人はやり過ぎだった、度を超えた、と感じる内容だったのではないかと思われます。
ただ、プロレスというのは、もともと激しい身体接触がある競技です。しかも、プロ選手同士の戦いということであれば、なおさらです。したがって、刑法の立場でみれば、仮に傷害罪の問題になったとしても、『正当行為』だったとして、違法性がなくなるケースではないでしょうか」
つまり、「犯罪にはならない」ということだが・・・。
「もちろん、私はこのような行為を肯定しているわけではありません。プロ選手はルールの範囲内で戦うべきであり、世IV虎選手の行為が許されるわけではありません。スポーツは楽しくしたいものです」
西口弁護士はこのように指摘し、注意を呼びかけていた。
今回の行為が許されるわけではないと考えたのは、主催団体も同じだったようだ。世IV虎選手の王座が剥奪され、無期限の出場停止処分となったことが2月25日、発表されている。
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