スノーピーク34歳社長「不倫辞任」は適正なのか 「経営者として」不適切な行為があったかが本質だ

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あえて公表したのは、ひょっとしたら近々メディア等で暴露されることを想定して先手を打ったのかもしれない。この先、会社側から発表されていること以上のスキャンダラスな事実が報道されたとしても、すでに辞任している人物に対して、メディアや市民は過度に叩こうとはしないだろうし、大きく話題にすることもないだろう。

単に辞任を発表するだけでなく、不都合な理由までを表明したのは、その先に待っているスキャンダルの暴露を想定していたシナリオを疑ってしまう。

経営者の情報発信のジレンマ

スティーブ・ジョブス以降、経営者が対外的に情報発信をしていく動きは加速している。

経営者みずからが情報発信することは、企業広報面で有効であることはもちろん、企業ブランドの強化、顧客や地域社会との関係構築、投資や従業員の獲得といった、多方面に影響を及ぼす。

経営者がメディアに出演したり、イベントや講演会で多くの人に語りかけたりすることはこれまでも多々あった。それは経営者の余技のようなもので、経営者の仕事の一環とは見なされていなかったが、現代においては、情報発信は経営者の重要な任務であり、情報発信力のある経営者が高く評価されるようになっている。

スノーピークにおいても、2代目社長であり、山井梨沙氏の父である山井太氏の時代から、社長自ら経営理念を語り、顧客とコミュニケ―ションを取ってきた。それによって、ファンが形成され、彼らの購買意欲がスノーピークの収益を支えてきた。

山井梨沙氏は32歳の若さで就任した女性社長として注目を集めていたのみならず、父・山井太氏から受け継いだ経営理念やコア事業であるアウトドアに関する熱い思いを語り、それを実行することで、多くの期待を集めていただけに、日頃からの山井梨沙社長の情報発信力の高さが裏目に出た事例ともいえるだろう。

スノーピークの件に限らず、経営者による情報発信はリスクと背中合わせだ。どんな立派なことを語ろうとも、不都合なプライバシーが明るみになれば、逆効果になりかねない。

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