音声学で解明、プリキュアの名前はなぜかわいい 音声学者、慶応大学教授・川原繁人氏に聞く

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慶応大学教授の川原繁人氏
川原繁人(かわはら・しげと)/慶応大学教授。1980年生まれ。国際基督教大学を卒業後、米マサチューセッツ大学にて博士号を取得。2013年から慶応大学言語文化研究所に移籍し、現在、教授。著書に『音とことばのふしぎな世界』『フリースタイル言語学』など。
プリキュアの名前はかわいい──。音の響きの話だ。子ども向けアニメ「プリキュア」シリーズでは、華やかな姿に変身して敵と戦う主要キャラクターたちを、プリキュアと呼ぶ。歴代プリキュアの名前には両唇(りょうしん)音、つまりパ行、バ行、マ行など両唇を使って出す音から始まるものが多いという。赤ちゃんが言語発達の初期に発する音としても知られる両唇音を聞いたとき、私たちは「かわいい」と感じるそうだ。
音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む 〜プリチュワからカピチュウ、おっけーぐるぐるまで〜
『音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む 〜プリチュワからカピチュウ、おっけーぐるぐるまで〜』(川原繁人 著/朝日出版社/1925円/280ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──プリキュアの名前が音声学の分析対象になるとは。

家族4人で「フレッシュプリキュア!」ごっこをしていたときの発見でした。その日の配役は、私が「(キュア)ベリー」で妻は「パイン」、上の娘は「ピーチ」、下の娘は「パッション」。これらはすべて両唇音から始まる言葉です。調べてみたら、全プリキュア59人中28人、半分弱の名前が両唇音から始まっていた(2019年時点)。日本語の子音の数を考えると、異様に高い割合です。それで、真剣に分析してみようと。

制作者がどこまで意識しているかはわかりませんが、プリキュアの名前に、私たちが「かわいい」と感じる音が多く使われているのは事実です。同じように、「ポケモン」の名前の法則性に関する研究では、名前に使われる濁音の数が進化レベルや強さに対応して増えることなどを解明しました。

音声学の面白さを伝えたい

──ポケットモンスターの分析は注目の的になりました。

実際、ポケモンの名前を分析した論文は世界中の大学で読まれています。「これだけが音声学だ」と言うつもりはないけれど、こうした研究をきっかけに、音声学の面白さを広く知ってもらいたい。

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