女性兵士の拡大は「究極の男女平等」といえるのか 「女性兵士という難問」一橋大・佐藤文香氏に聞く

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佐藤文香(さとう・ふみか)/一橋大学大学院社会学研究科・社会学部教授。1972年生まれ。97年慶応大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了、00年同博士課程単位取得退学。02年に博士(学術)。中部大学専任講師、一橋大学大学院社会学研究科助教授、准教授を経て15年より現職。専門はジェンダー研究、戦争・軍隊の社会学(撮影:梅谷秀司)
ロシアによるウクライナ侵攻では、武器を取るウクライナ軍の女性兵士が耳目を集めた。日本の自衛隊も含めて、今世界では女性の軍事動員が拡大しているが、その大義名分となっているのが男女平等だ。ただ、平等を無邪気に歓迎するのはどうにも躊躇される。

――ウクライナの公式SNSアカウントが、女性兵士の画像や動画を投稿して話題を呼びました。

ウクライナの女性兵士
ロシアのウクライナ侵攻では、戦うウクライナ女性兵士の姿がしばし注目を浴びている(写真はウクライナ政府の公式インスタグラムのスクリーンショット)

美しい女性兵士たちの姿を前景化することで人々の関心を集めることができると、ウクライナ政府は見込んでやっているのでしょう。

その効果は大きく2つ。1つはウクライナ国内に対するもの。国民総動員令により成人男性の国外避難が原則禁止される中、あえて国に残って戦う女性を取り上げることで、男性に言外のプレッシャーを与えられる。「女ですら戦っているのに、逃げようとするお前は卑怯者だ。男の風上にも置けない」と。

国際的に共感を集めるうえでも、プロパガンダとして機能します。女性が懸命に戦う姿は人々の胸を打つ。それによりロシアの不当さは強調され、ウクライナへの同情は強まる。その資源として、彼女たちの姿を使っているのだと思います。

旧共産圏では早くから女性が戦闘に参加

――ウクライナ軍では、全体の15.6%、3万人超が女性兵士。意外と多い印象です。

女性兵士は世界で拡大しており、たとえばNATO(北大西洋条約機構)諸国の平均は2019年の最新値で12%です。

軍隊で女性を活用する動きは第1次、第2次世界大戦の頃からありました。ただアメリカやイギリスでは看護や調理、事務などの職種から徐々に女性を受け入れていったのに対し、旧ソ連や中国では早くから狙撃兵など軍事的な性格の強い職域にも女性を配置してきた歴史があります。

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