──納棺の手伝いは当初予定外だったのですか?
ええ、まったく。親父が亡くなった翌日、葬儀社の50代男性の方が来て、その横に制服姿の小柄な若い女性がいた。この方が納棺師のすずさんでした。まさか納棺師さんだとは思わなかった。その会社はたまたま社員に納棺師の方がいた。たまたまだそうです。
「せっかくだから、お好きな服を着せてあげましょう」ということで、母と弟とクローゼットに行き、ちょっと格好いい服を着せようと、バーバリーのジャケットとか、僕が初任給で買ってあげたアルマーニのネクタイとか、「ラーメンのシミが付いてるけど、これいいんじゃない?」とか話しながら選んだ。その時点ではまだ、親父は死体というよそよそしいモノでした。すずさんに言われる前は、遺体といえばお決まりの白装束、と思っていましたし。
これはさすがにプロの仕事だろうと、布団の横に下着をそろえて部屋を出ようとしたとき、手伝わないか、と声をかけられたんです。
「さわる」と「ふれる」の違いを実感
──実は以前、映画『おくりびと』の監督・脚本両氏に仕事でインタビューされてたんですよね。
その準備でDVDも数回見ていました。でも、当事者になるまでやはりひとごとだったんですね。
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