「心病む妻」と20年歩んだ記者が味わった深い絶望 『妻はサバイバー』著者・永田豊隆氏に聞く

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永田豊隆(ながた・とよたか)/朝日新聞記者。1968年生まれ。読売新聞を経て、2002年に朝日新聞社入社。岡山総局、大阪本社生活文化部、大阪代表室、地域報道部、声編集部を経て、現在はネットワーク報道本部。生活保護関連の報道で、貧困ジャーナリズム賞を07年と09年に受賞。(撮影:ヒラオカスタジオ)
大量の食べ物を胃に詰め込んでは、すべて吐く。妻の摂食障害に気がついたのは、結婚4年目の2002年。以来20年、アルコール依存症や解離性障害などにも罹患(りかん)した妻との生活は悪戦苦闘の連続だった。
妻はサバイバー
『妻はサバイバー』(永田豊隆 著/朝日新聞出版/1540円/144ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──日本には400万人超の精神病患者がいますが、その家族は身内の病について口を閉ざしがちです。文字にするには覚悟が必要だったのでは。

私たち夫婦の体験を記者として書き残しておきたいという気持ちはもともとあって、暇を見つけては少しずつ書きためていました。老後にでも表に出せれば、と。

状況が変わったのは17年のこと。同僚の記者から「(妻との生活について)連載してみないか」と提案された。ただ、妻は公表に同意しないと踏んでいました。病状そのものや、原因となった幼少時や大人になってからの性被害などに言及せざるをえないからです。

妻に話すと、予想に反して「自分と同じような苦しみを味わっている人のために、全部書いてほしい」と言ってくれた。半年ほど折に触れて「本当に書いていいのか」と問いかけ続け、それでも本人の意思が変わらなかったので、書くことに決めました。

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