
──日本には400万人超の精神病患者がいますが、その家族は身内の病について口を閉ざしがちです。文字にするには覚悟が必要だったのでは。
私たち夫婦の体験を記者として書き残しておきたいという気持ちはもともとあって、暇を見つけては少しずつ書きためていました。老後にでも表に出せれば、と。
状況が変わったのは17年のこと。同僚の記者から「(妻との生活について)連載してみないか」と提案された。ただ、妻は公表に同意しないと踏んでいました。病状そのものや、原因となった幼少時や大人になってからの性被害などに言及せざるをえないからです。
妻に話すと、予想に反して「自分と同じような苦しみを味わっている人のために、全部書いてほしい」と言ってくれた。半年ほど折に触れて「本当に書いていいのか」と問いかけ続け、それでも本人の意思が変わらなかったので、書くことに決めました。
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