在日コリアンとの「共生」、考えるべきは日本人 『在日朝鮮人を生きる』著者、山本かほり氏に聞く

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山本かほり(やまもと・かおり)/愛知県立大学教授。神戸女学院大学文学部卒業。関西大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。専門は社会学、とくに在日朝鮮人の生活史や朝鮮学校研究。共著書に『国際移動と移民政策 日韓の事例と多文化主義再考』など。
日本で生活するエスニック集団の中でも、在日コリアンは歴史的にも人数的にも突出している。しかし、北朝鮮を祖国と考えている在日朝鮮人社会と日本社会の関係は、時に外交や安全保障における北朝鮮の動きが影を落とし、必ずしも良好とは言いがたい。関係改善に向け、「多数派」の日本人は何を心がけるべきか。
在日朝鮮人を生きる: 〈祖国〉〈民族〉そして日本社会の眼差しの中で
『在日朝鮮人を生きる: 〈祖国〉〈民族〉そして日本社会の眼差しの中で』(山本 かほり著/三一書房/3080円/336ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──拉致問題や核・ミサイル問題など、日本にとって北朝鮮は脅威となっています。

外交・安保分野から朝鮮(北朝鮮)が「脅威だ」と感じる人が多いのはわかります。そこから派生した「北朝鮮フォビア」という言葉がありますが、この場合の「フォビア」とは、「北朝鮮は荒唐無稽な国で怖い」という嫌悪や恐怖感に加え、他者の排斥と蔑視を含んでいます。朝鮮と関係があるということだけで、在日朝鮮人へのあらゆる差別や偏見が許されるかのような風潮は決して受け入れられるものではありません。

──日朝関係の改善において、日本側の最大のネックは拉致問題ですが、北朝鮮は朝鮮高級学校(高校、以下朝鮮学校)の授業料無償化を重要視しています。

高校無償化は2010年に当時の民主党政権が打ち出しました。家庭の状況にかかわらず、すべての高校生などが安心して勉学に打ち込める社会をつくるのが目的でした。また無償化の適用には「教育内容や外交上の問題は考慮しない」との見解を文部科学省は示していました。これを踏まえると、朝鮮学校にも当然、無償化が適用されるべきなのです。

授業料無償化をめぐる動き

──民主党政権はその後、朝鮮学校への適用に慎重になり、結論を出せないまま政権が代わります。

12年末に自民党の下村博文・文科相は「拉致問題の進展がなく、日朝の国交もなく、朝鮮総聯(在日本朝鮮人総聯合会)との密接な関係が朝鮮学校にあるから無償化の対象とするには国民の理解を得られない」として授業料の無償化を見送りました。

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