借金返済で丸裸でも、「私有」をやめて生活が輝く 『共有地をつくる』著者の平川克美氏に聞く

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後ろの本はかつての蔵書。今はカフェの共有物(撮影:梅谷秀司)
平川克美(ひらかわ・かつみ)/文筆家、「隣町珈琲」店主。1950年生まれ。早稲田大学理工学部機械工学科卒業後、翻訳を主業務とするアーバン・トランスレーションを設立。企業経営の傍ら、株式会社を主なテーマに執筆活動も。『小商いのすすめ』『「消費」をやめる』『移行期的混乱』『株式会社の世界史』など著書多数。
東京・品川、荏原中延(えばらなかのぶ)の商店街にある「隣町珈琲(カフェ)」は、並ばずにコーヒーが飲める昔ながらの喫茶店で、地元の“共有地”だ。といっても「コモンズの悲劇」(ハーディン)の共有地とは違う。コーヒー代を払えば1万冊の蔵書は読み放題、夜ともなれば、別料金で演奏会や専門家による連続講座などのイベントが催されることも。「コモンズ」と何が違うのか。
共有地をつくる
『共有地をつくる』(平川克美 著/ミシマ社/1980円/224ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──そもそも共同体的なものは好きじゃなかったのですよね。

父が蒲田の町工場の創業者で、僕は周囲から後継者と見なされて育った。小さな町の血縁・地縁的なものを忌避し、自分が快適な生き方を目指したら、いろんな失敗の末、共同体的なものにたどり着いてしまった(笑)。驚いたのは、想像以上に快適だったこと。生活の質が落ちるどころか向上して、いちばん稼いでいたときよりもいいんですよ。これは何だ、って。

──共有から私有へ、が資本主義の歴史ならば、私有側の人でした。

大学を出て起業したから経営者しかやったことがない。米シリコンバレーの「ビジネス・カフェ」の設立にも参加したし、インキュベーターもやった。資本主義の原動力は私有制とその上に乗った株式会社。資本主義は共同体を個に解体し、つねに需要が供給を上回る状態をつくり出してきたが、人口減少で需給が逆転した。僕の会社も行き詰まり、低金利だからと借金をしたのが悪かった。返済に追われ、自己破産か清算かとなり、2016年に清算を選びました。自宅含め約40年で蓄えた私有財産を失い、金銭的に丸裸になった。

──残ったのが隣町珈琲。

会社を畳んだら、行く所がないので、14年に友人たちと遊びでつくった喫茶店の客になったわけです。朝から晩までいて、途中で銭湯に行き、食事も外で済ませる。寝に帰るだけのアパートに月10万円は高いけれど、本が1万冊以上あり身動きが取れなかった。

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