核兵器禁止条約に加入すれば、日本は「丸腰」に 『核兵器禁止条約は日本を守れるか』著者・佐野利男氏

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佐野 利男(さの・としお)/原子力委員会委員。1952年生まれ。東京大学法学部卒、米スワスモア大学留学。77年外務省入省。大臣官房総括審議官、軍縮不拡散・科学部長、デンマーク大使、ジュネーブ軍縮会議日本政府代表部大使を歴任。2017年から現職。著書に『女神フライアが愛した国』。(撮影:今井康一)
唯一の戦争被爆国である日本にとって核廃絶は悲願だ。しかし2021年に発効し、61カ国が締約した核兵器禁止条約に日本は背を向けている。この6月に核兵器禁止条約の第1回締約国会議、8月には核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議が予定され、核廃絶・禁止への関心が高まる中、日本はこのままでいいのか。
核兵器禁止条約は日本を守れるか
『核兵器禁止条約は日本を守れるか』(佐野利男 著/信山社/2200円/208ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──日本人の多くが、なぜ核兵器禁止条約に参加しないのかと思っているのではないでしょうか。

広島・長崎を経験し、核廃絶運動に共鳴してきた日本国民にとって同条約が人類の夢のように映り、加入しないことに義憤を感じる人も多いと思います。それゆえに同条約の正確な姿を伝え、日本がなぜ参加できないのかという疑問に答えようと筆を執りました。

──日本は中国とロシア、さらに北朝鮮と、核兵器を持つ国に囲まれています。

核武装国に囲まれた東アジアにおける日本の安全保障環境はとても厳しい。そのような状況に対処するのが防衛力であり、日米安全保障条約です。日米安保は米国の「核の傘」という核抑止力がコアになっています。ところが、核兵器禁止条約はその核抑止力を否定します。この条約に日本が入った途端、核の傘がなくなり、日本は「丸腰」の状態になってしまう。隣国の核の恫喝になすすべもなく、極めて危険な状況に陥るのです。日本を守れる代替策がない以上、核兵器禁止条約は、政策オプションにはなりえないのです。

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