戦争や災害が日常化する現在ほど、国策のウソやフィクションを見破る「調査報道」が必要とされるときはない。毎日新聞の記者だった著者は福島第一原子力発電所事故の被災者政策や原発の再稼働問題をテーマとし、独自の報道手法で挑んできた。
──目指している調査報道は、世の中でいわれる特ダネとはだいぶ違うようですね。
新聞社の場合、特ダネとは、社会部なら事件の犯人や権力者の逮捕を、経済部であれば大企業の経営者交代や合併を他紙に先駆けて報じることになります。しかし、そうした特ダネ報道の多くは、捜査当局や企業の幹部など日常的な取材源との親密な関係によって成立します。一方、私が目指してきた調査報道はそれとは趣が異なります。
テーマとした原発は、官僚機構によって支えられている国策の最たるものです。被害者の切り捨てなど、その内実がいかに非人間的なものであったとしても、国策である以上、担当者は思考停止して物事を進めなければならない。
また、国策の遂行に際しては、表に出すことが不都合な内容も含まれる。そのため意思決定過程を隠し、結論だけが政策として示される場合が多い。さらに日本の場合、本音と建前、温情的なスローガンと冷酷なテーゼ(命題)という二枚舌が用いられ、正確な検証をより難しくしています。
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