「スニーカー転売屋」ホームレスまで誘う巧妙手口 ECでもbotが自動購入、普通の手段で入手困難に
それを解決するために、2017年のオフ―ホワイトとナイキのコラボコレクション「THE TEN」の最初の発売に合わせて、初めて〝ドレスコード〟を導入した。これは、購入資格を得られる抽選券を引くために、指定されたスニーカーを履いておかなければならないというルール。
このときは、アトモスがナイキに別注した43モデルのうちのいずれかを着用しなければならないとした。「スニーカーを愛している人にきちんと届けたい」という僕たちなりの意図だった。ドレスコードを設けたことで、実際にかなり時間が短縮できるようになった。
すると今度は、転売屋がキャパに、ドレスコードに指定されたスニーカーを履かせて、並ばせるようになった。サイズが合っていなかったり、紙のタグが付きっぱなしだったり、ときには新品のスニーカーが汚れないように底貼り(ソールをテープなどで保護する方法)していたり。
あの手この手でルールをかいくぐり、参戦してくるようになったのだ。終いにはビニール袋を被せる者まで現れた。街中をガサガサ、ガサガサと、足にビニール袋を巻き付けた集団が歩く光景は、異様でもあった。
やられるばかりではいられないと思った僕たちは、それを逆手にとって、シリコンゴムでできた透明のレインカバーを開発し、販売した。雨でスニーカーを濡らしたくない人にはもちろん、並びのときに新品のスニーカーを汚したくない人にもバッチリだ。雨対策か並びのためか、どちらの需要が高かったのかはわからないけど、大ヒット商品となった。
転売屋とbot
転売屋の存在はECにも影を落としている。僕たちが最も問題視した転売行為がbot(ボット)によるものだ。botとは人の代わりに自動的に動くコンピュータープログラムの総称。例えばウェブで商品を買う場合、普通だったらそのページを開いて、カートに入れて、お金を払って……と一つずつ手順を追っていくことになるが、botはその手順を自動的に、一瞬で行ってしまう。
株式の世界では、ごく一般的で、botを使って1日に数万件の取引が行われる。1銭単位で値上がりした株を一気に買い占めて、一気に売り、それを繰り返して儲けるのだ。
2010年代後半には、個人レベルでもこのbotを数万~数十万円で簡単に組み込めるようになり、オンラインショップで、発売と同時に一瞬で買い占められるような状況が増えてきた。いくら対策してもいたちごっこだから、最終的には怪しい買い上げを手動でキャンセルするしかない。
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