ロシア「ウクライナ国境の町」で今起こっている事 「ウクライナに攻め込まれる」の妄想に住民は…

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そうなれば、ロシアに協力した罪で処罰されるというわけだ。占領統治機構に協力した者は10〜15年の禁錮刑に処せられるという法律がウクライナで成立したことも、彼らが恐怖を感じる理由となっている。

イリナと名乗る女性(18)は、ウクライナの国境警備員をしていたボーイフレンドの個人情報が、協力者を特定したとするTelegram(テレグラム)グループに投稿されたと話した。

「もうあそこには戻れない」。新たに到着した難民らに衣服や食料を渡している衣料バンクに来ていたイリナは、母と妹が村に残っているため、ロシアがすぐにまた占領してくれることを願っていると話した。

引き裂かれる国境の人々

人口40万人のベルゴロド市で、国境の向こう側にいるウクライナ人が恐怖の対象になるというのは、10年前なら考えられないことだった。ベルゴロドのロシア人は長年、戦争前には200万人の人口を擁したウクライナ第2の都市ハルキウまで50マイル(約80キロメートル)の道のりを定期的に移動し、どんちゃん騒ぎや食事、買い物を楽しんでいた。親族が国境の両側にまたがって暮らしているケースも多い。

「ベルゴロドは完全にショック状態だった」。過去数カ月間にわたりウクライナの戦場から住民をロシア側に避難させる活動に従事してきたレストランの店主、オレグ・クセノフ(41)はこう言った。「私たちはハルキウを愛している」。

ハルキウ生まれで10年以上前にベルゴロドに移住にしたクセノフは、民間人をウクライナからロシアに退避させる活動に自らの時間をささげている。その彼が懸念するのは、この戦争が国境沿いに暮らす両国の国民に及ぼす長期的な影響だ。

「この殺戮はいつか終わる」。爆撃に備え窓を合板で覆ったレストランで行われた取材に対し、クセノフはこう言った。「だが、そのとき私たちはいったい何者になっているのか。どうやってお互いの目を見ればいいのだろう」。

(執筆:Valerie Hopkins記者)
(C)2022 The New York Times

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