ロシア「ウクライナ国境の町」で今起こっている事 「ウクライナに攻め込まれる」の妄想に住民は…
衣類や雑貨、軍服を売る屋台が雑然と立ち並ぶ市場の雰囲気には緊張感が漂っていた。ベルゴロド市は直接の攻撃にさらされているわけではないが、遠方ではロシア軍の防空システムがミサイルを迎撃している。爆発音が鳴り響き、ミサイルの破片がコムソモルスキー地域の住宅や建物に被害をもたらしている。
9月12日には、教員養成大学、ショッピングセンター、バス乗り場で避難訓練が行われた。当局は以前から計画されていた訓練だと伝えることで、不安がる住民を安心させようとしていた。
ウクライナの砲撃の影響を受けるようになったことから、地元の行政当局は国境沿いの町や村から住民を避難させるようになっている。地元で事業を営むデニスは最近、人を雇って自宅の庭に11フィート(約3.3メートル)の防空壕を掘ってもらったという。
住民の多くが、身の危険が高まっているという恐怖心を抱くようになっているのだ。
「私たちは恐怖におびえている。子ども相手の仕事ではとくに厳しい」と、幼稚園教諭をしているエカテリーナ(21)は言った。つい先日、幼稚園にもミサイルの破片が落ちてきたそうだ。「子どもたちは『ミサイルだ』と叫んで走り始めるけれど、私たちはただの雷だと伝えている」
プーチンと首都住民への怒り
ベルゴロドの住民の大多数はロシア政府とこの軍事作戦を支持している。それでも、全面戦争が行われていないかのような生活を続ける他地域に対し、いら立ちを見せる人も少なくない。
「恥ってものを知らないのかしら」。コムソモルスキー地域の中年女性、リュドミラは叫んだ。
「ここでは血が流れているっていうのに、モスクワの人間は『モスクワの日』を祝っている」。リュドミラは、先日の首都での祝賀行事を持ち出して、こう言った。祝賀行事では、花火とプーチンによる大観覧車のグランドオープニングが目玉となっていた。「こっちでは誰もが兵士の心配をしているのに、向こうでは誰もが飲んで大騒ぎ!」