「100ドル渡せば陰性」タイで偽造陰性証明が発覚 コロナ陽性者が日本に帰国した可能性も

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翌日、検査結果が届いた。陰性だった。それを自分で証明書フォームに書き込み、MySOS(入国者健康居所確認アプリ)に登録した。MySOSは厚生労働省が導入した、帰国や帰国後の待機などに使われるアプリだ。これに登録すると、帰国時の審査が簡略化される。その作業をしながら、Dさんにひとつの疑問が生まれた。

「仮に陽性でも陰性と書くことができてしまうじゃないか?」

現地法人の社長に聞いてみた。

「そうなんです。大きな声じゃいえませんけど、バンコクでは周知の事実です。陽性でも陰性にチェックを入れて帰国できるんです」 

陽性でもかなりの人が帰国している

そのクリニックは検査代を安くするため、証明書フォームに記入する作業を軽減しようとした。そこで白紙の証明書を発行し、本人が記入するスタイルに。本来ならそこにクリニック発行の陰性証明書を添える。

日本の検疫は、チェック作業のスピードアップを図るため、MySOSを導入した。偽造の陰性証明書をMySOSに登録すると、クリニック発行の陰性証明をチェックすることはあまりない。実数の把握は難しいが、陽性結果の出たかなりの人がこの方法で陰性者として帰国しているという。

(筆者撮影)

しかしこの方法は8月中旬から難しくなった。陰性証明書は飛行機にチェックインするときも必要になる。陽性結果が出た日本人男性が、白紙証明書への記入を忘れ、カウンターで陰性と記入。それを航空会社のスタッフが目撃したのだ。以来、このクリニックで検査を受けた人は、クリニック発行の証明書を添えるという通達が出たという。

日本でミャンマー料理店を経営するRさん(45)は、いま、ミャンマーに一時帰国している。「PCR検査を受け、陽性が出ると帰国できないから、感染しないように気をつけてね」と連絡した。

するとRさんからこんな返事がきた。

「ミャンマーでは陽性結果が出ても、100ドルほど渡せば陰性にしてくれるので大丈夫です」

いったいこれまで、どれだけの陽性者が陰性と偽って日本に帰国したのだろうか……。 

(文・下川裕治) 

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