「習近平3期目」地ならしに向けた凄惨な権力闘争 証拠をでっち上げて、邪魔者を政治的に暗殺

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その事故は、香港の中国語タブロイド紙の格好のネタになり、各紙は赤い貴族の息子や娘たちの放蕩について競って報じた。しかし、令谷を知っている私には、何かが違うような気がした。彼は確かに速い車が好きだったが、思想にも興味を持っていたし、ほかの「赤い貴族」に見られる虚無的な放縦さは感じられなかった。

事故の詳細が明らかになったのは、令計劃をその年に中央政治局常務委員に昇進させるかどうかを決める会議の数日前だった。そのため、令計劃は、息子は本当は事故で死んだのではなく、すべては自分や団派のメンバーを失脚させるために仕組まれたものだと、ずっと信じていた。この説を欧米の友人に話すと、共産党がそんなごまかしに関わる可能性は薄いだろうという答えが返ってきた。だが、多くの人は、権力の存亡がかかっている場合に党がどこまでのことをするか、わかっていないのだ。

事故の後、令計劃は致命的な過ちを犯した。張培莉(温家宝の妻、著者夫妻と懇意だった)によれば、彼は、党の情報機関のトップ周永康を説得して、衝突事故に関する情報が漏れないようにさせた。だが、党の総書記である胡錦濤は、事故の話をどこからか聞きつけた。胡錦濤が令計劃に何が起きたのかを聞くと、彼は息子の関与を否定した。

しかし、前任者の江沢民に事実を突きつけられると、胡錦濤はついに事故の実態を知ることになる。令計劃の噓が暴露されたために、胡錦濤も彼を守れなくなった。結果として、胡錦濤は中国の権力の頂点に仲間を就かせるチャンスを失った。

再起不能に追い込む

6カ月後の2012年9月に令計劃が「首席太監」を解任されると、彼を2度と立ち上がれないようにするための本格的な攻撃が始まった。同年11月に開催された中国共産党第18期中央委員会第1回全体会議で、彼は中央政治局に席を得られなかった。

党は、令計劃を2年間、政治的宙づり状態に置いたあと、2014年12月に、彼が党の中央規律検査委員会の取り調べを受けていると発表した。令計劃は党を除名され、汚職の罪で起訴された。2016年7月、彼は終身刑を宣告された。

令計劃の告訴には、妻の谷麗萍に対する嫌疑も含まれていた。検察官は、谷麗萍が、夫に政治的便宜を図ってもらおうとする企業から賄賂を受け取っていたと主張した。だが、谷麗萍と何年もの付き合いがあるホイットニーと私は、検察の主張には無理があると思った。第1に、彼女はほとんど夫と会っていなかった。「首席太監」として、令計劃は、ほぼ毎日、中南海の党本部で寝泊まりしていた。彼には、妻と共謀して汚職ビジネス帝国を築く時間などなかったのである。

第2に、ホイットニーは谷麗萍と北京でしばしば会うほかに、2人で香港にショッピングに行くことがあったが、谷麗萍は腕時計や服に大金を使うのをためらっていた。ホイットニーは、谷麗萍も彼女の夫も、たいして金持ちではないし、それほど腐敗に手を染めていないという思いを強くした。

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