「習近平3期目」地ならしに向けた凄惨な権力闘争 証拠をでっち上げて、邪魔者を政治的に暗殺
共産党の典型的なやり方どおり、検閲官は写真やビデオクリップから孫政才の存在を消し始めた。7月の終わり、党は、彼が党規違反の疑いで捜査を受けていると発表し、孫政才は、2012年に習近平が権力を握って以降、初めて汚職の嫌疑をかけられた中央政治局の現役メンバーになった。彼は、2017年9月に党を除名され、翌年5月、2400万ドル相当の収賄の罪で終身刑を宣告された。
孫政才の一番のライバルだった胡春華は、彼よりもわずかにうまくやっていた。胡春華は投獄はされなかったが、習近平は彼の昇進も認めなかった。2017年に、彼は中央政治局常務委員会に席を得るはずだったが、1つ下のレベルに留め置かれた。
孫政才と令計劃に対する嫌疑は、習近平の命令に従った党の情報機関によって作られたものだと私たちは思っている。おそらく、胡錦濤や温家宝の息のかかった人間を中央政治局常務委員会に入れないようにしろ、と習近平が命じたのだ。
彼らがいくら横領したとか、そもそも横領をしたということ自体が、手品のように帽子から出てきたものだと、私たちは思っている。習近平が彼らを粛清しろと命令し、中央規律検査委員会がその命令に従った。そして、国の検察官が、中国の法律の底なしの柔軟性を利用して、彼らをさっさと刑務所送りにした。習近平はこうやって権力を固めてきたのである。
汚職ではなく政治的な暗殺
令計劃と孫政才が続けて逮捕されたことで、少しでも中国を理解している人には、これらが汚職事件でないことがはっきりした。私の言葉で言うなら、これは政治的な暗殺である。反腐敗キャンペーンは、例えば赤い貴族など、習近平がひいきにする人々は捜査対象にしなかった。その典型が、上海幇(上海閥)を率いる江沢民に関係する人々である。
2014年1月、党は、北京の超高級ナイトクラブに閉店を命じた。だが、デイヴィッド・リーの「マオタイクラブ」は閉鎖されなかった。デイヴィッドの義父である賈親分が、江沢民と固い絆で結ばれており、江沢民の後押しがなければ、習近平の今の地位はなかったからである。
孫政才は、出世階段を登ることにレーザーのように照準を合わせていた。ヘマをしないかぎり、最後には中央政治局常務委員会に入り、国家主席になれなかったとしても総理になると、彼はホイットニーに言っていた。彼は、どんな行動をするときも、常に目標を見据えていた。
党は、孫政才が売春婦を買い、賄賂を受け取ったと主張した。だが、私たちは彼をよく知っている。彼は金銭やセックスに対して強い欲求を持っていない。彼が執拗に欲しがっていたのは権力だ。人口14億人の国を手中に収めることができるかもしれないのに、どうして女性や数百万ドルの金を追いかける必要があるだろうか。
ホイットニーと私が見てきたところでは、汚職の誘惑に負けるのは、たいがい退職が近く、私腹を肥やそうとしている官僚で、国を支配しようと競い合っている人間ではない。私たちの見てきた孫政才は、不正行為の嫌疑をかけられないように注意して仕事をしていた。順義区にいたとき、彼は確かに有力者たちに便宜を図って土地を分配したが、あれは、厳密に法的な意味で汚職ではなかった。
それに対し、習近平と手下たちは、明らかに意図して、孫政才に関する事件をでっち上げたのだ。そうなったら、彼にはなすすべがない。中国では、歴史を通して、多くの皇帝がたくさんの皇子たちを葬ってきた。今、起きていることも同じだ。
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