国会でも核心触れぬ首相、自民党政権「劣化」の実態 閉会中審査に出席も「国葬」批判を払拭できず

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霊感商法や合同結婚式など社会的な問題を起こしてきた旧統一教会と自民党との関係は、組織のコンプライアンス問題である。法令だけでなく社会的規範を守るのは、公的な存在である政党として当然のことだ。それが守れていないなら、弁護士らによる第三者機関による調査を進め、内容を公表して、必要なら処分をするという手続きが欠かせない。

だが、自民党は形式的なアンケート調査を実施しただけで、本格的な真相解明に乗り出そうとしていない。

かつてはあった執行部を突き上げる場面が見られず

自民党ではかつて、国民から強い批判を受けた場合、党内で活発な議論が沸き上がり、幹事長ら執行部を突き上げる場面がみられてきた。しかしいま、国葬や旧統一教会への対応をめぐって、党内論議はほとんど起きていない。派閥領袖だけでなく中堅・若手からも批判の声は聞かれない。それがかえって岸田自民党の活力をそぎ、さらに世論の批判を受けるという悪循環に陥っている。

国葬の法的根拠を明確にできない政権スタッフ、全体の予算をまとめるように指示できない官房長官、国葬の是非や旧統一教会との問題を議論しない自民党……。国葬が岸田自民党の弱さを浮き彫りにしている。

9月8日の衆参両院の議院運営委員会で、岸田首相は国葬について、①8年8カ月という憲政史上最長の首相在任期間、②外交・安全保障政策に対する海外からの高い評価、③東日本大震災からの復興を進めた、④国政選挙中の非業の死を受けて暴力に屈せず民主主義を守る決意を表す、などこれまで述べてきた理由を繰り返した。

岸田首相が国葬に踏み切った自民党内保守派への配慮や旧統一教会と安倍氏との関係をどう考えるかといった「核心」に触れることはなかった。こうした説明では、国葬批判を鎮めることはできず、反対論がさらに高まることが予想される。

一連の過程で岸田首相は政権党の劣化ぶりを露呈してしまった。それが経済や外交・安全保障など今後の政策運営にも影を落とすようだと、政権が行きづまる日は遠くない。

星 浩 政治ジャーナリスト

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ほし ひろし / Hiroshi Hoshi

1955年生まれ。東京大学教養学部卒業。朝日新聞社入社。ワシントン特派員、政治部デスクを経て政治担当編集委員、東京大学特任教授、朝日新聞オピニオン編集長・論説主幹代理。2013年4月から朝日新聞特別編集委員。2016年3月からフリー。同年3月28日からTBS系の報道番組「NEWS23」のメインキャスター・コメンテーターを務める。著書多数。『官房長官 側近の政治学』(朝日選書、2014年)、『絶対に知っておくべき日本と日本人の10大問題』(三笠書房、2011年)、『安倍政権の日本』(朝日新書、2006年)など。

 

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