この会社では経営陣肝いりの中期事業計画でDX化の推進を掲げています。そこに新組織の立ち上げをするとまで堂々と記載したものの、社内には適任者が皆無。
そこで大半の人材を中途採用で確保することになり、人事部に対して「可及的速やかに採用せよ!」との号令がかかりました。
ところが、経営陣に「どんな人材が欲しいのですか?」と尋ねても的確な回答ありません。仕方なく、そのまま募集を開始。人事部の推測でつくった求人票だったのですが、何の反応もない状態で半年以上の時間が経過してしまいました。
このままでは事業計画の重要テーマそのものが頓挫しかねません。経営陣からはきつい催促のプレッシャーが届きます。
知人は人事一筋25年、採用のプロを自認してきましたが、今回ばかりはと衝撃を受けていました。採れない嘆きに加えて、「中途採用の大きな転換期かもしれない」ともつぶやいていたのが印象的でした。
中途採用の大きな転換期
振り返れば、日本における中途採用は、「買い手市場」と「売り手市場」が頻繁に行き来しながら拡大をしてきました。
景気が悪くなると(求人倍率が1.0を割る)買い手市場の時期がやってきます。とくに大企業が中途採用を控えるので、賢い中堅企業は果敢に採用を行い、景気回復時期に向けた人員を確保。成長の起爆剤にしてきました。
ところが2011年以降は1.0を割ることがなく、慢性的な売り手市場。中途採用による人材確保は大変に困難な状況が続いています。
この慢性的な売り手市場のことを、前出の人事部長は転換期と言っているのでしょうか? いいえ、そうではありません。
慢性的な売り手市場が続いて採用難度が上がっているとのデータは、マクロデータからは読み取ることはできません。
ある意味、突拍子もないくらいに難易度の高い中途採用を経営陣が要望。その対応は人事部に蓄積してきた過去のノウハウでは難しい。ところが、この採用を成功させないと人事部の存在意義が問われるーー。
前述のDX推進とかM&Aなど、企業が成長するためのカギとなると言われる人材=変革人材を、企業が中途採用で必死で採ろうとするようになってきたことについて、転換期と感じたようです。
ただ、そんな人材は在野でも簡単にはみつかりません。転職データベースの企業に話を聞いても「なかなか登録はないので希少な人材です」との回答。
ちなみにこうした場合に、多く対象となっているのは、職務経験が豊富な30代前後。さらに言えば、35歳以上でも問題なし。過去には「35歳転職限界説」が叫ばれていましたから、時代は変わりましたね。
では、変革のキーとなる人材はどこにアプローチすれば採れるのでしょうか?
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