不通の鉄路が工事用道路に、肥薩線被災地の現状 豪雨災害2年、列車の代わりにトラックが走る

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しかし、鉄路は現在も不通のままだ。利用者のことを考えれば一刻も早く復旧されるべきだが、橋梁部分の復旧はJRが単独で進められるものではない。将来の豪雨に備えた河幅の拡張や基準水位の引き上げなどの治水対策が定まらないことには橋梁の復旧作業に着手できない。

昨年12月、球磨川水系の長期的な治水の方向性がようやくまとまった。これを踏まえ、国と県は肥薩線の復旧方法と復旧後の同線のあり方について検討する「JR肥薩線検討会議」を今年3月に立ち上げ、そこにJR九州も参加して協議が重ねられている。

この延長線上の動きとして実現したのが、今回の現地視察会である。「なぜ被災から2年も経ってから開催するのか」という質問が報道陣から出たが、「豪雨直後は現場にも入れなかった。ようやく道路整備が進んできたので視察できるタイミングになった」と、JR九州の上符友則地域戦略部長が説明した。

線路を工事用道路として活用

報道陣を乗せた2台のマイクロバスは12時20分に新八代駅近くにある八代復興事務所を出発。30分ほど走ると坂本駅に到着した。レトロな雰囲気が鉄道ファンに人気の木造駅舎。正面にある駅の看板のすぐ下にはこの高さまで水位が上がったことを示す赤いラインが引かれており、豪雨のすさまじさを実感させた。

肥薩線坂本駅
坂本駅の木造駅舎。令和2年7月豪雨の際は水が赤いラインの高さまで達した(記者撮影)

被災直後は線路が土砂に埋もれ、駅前にはひっくり返った車が取り残されていたが、現在はきれいに整備されている。線路があった場所にはかさ上げされた土地が広がっていた。河川などの復旧作業を行うトラックなどが通る工事用道路として活用されている。

坂本駅を後にして人吉方面に向かう。肥薩線と道路が並行している区間は約30kmに及ぶ。道幅の狭い箇所は、道路を迂回して、線路上にアスファルトを敷いた工事用道路の上を走る。この工事用道路の全長は迂回路のほかに資材置き場なども含め約7km。報道陣を乗せたバスもその上を走る。

国がJR九州から線路を借り受けて道路にした。工事完了後はJR九州に返還される。どのような状態で返還されるかは未定という。

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