今でもこのあたりは閑静な住宅地だが、さすがに100年以上も前の面影は少ない。1945年の空襲により田端も焼き払われ、雰囲気が大きく変わったという。文士村がどのようなところであったのかは、田端駅前に1993年に開設された、田端文士村記念館で知ることができる。芥川龍之介旧居跡や、室生犀星宅にあった庭石(童橋公園内へ移設)など、要所には案内看板も立てられた。
北区は芥川龍之介記念館の建設計画を、旧居跡地の一部を取得して進めている。情報収集や調査研究の拠点になるほか、書斎を忠実に再現。建物や内装、庭などを含めて、大正時代の生活がイメージできる施設になる予定だ。ただ、当初は2023年開館が目指されていたが、新型コロナウイルス感染症の流行により計画は遅れ、現在のところ、まだ工事は始まっていない。
人気アニメ映画の聖地にも
田端駅にはメイン改札口となりにぎわっている北口のほか、南口もある。そちらは小さな駅舎が崖の下に隠れるように建っているだけの、山手線の駅では屈指の目立たない出入り口だ。今は駅員も常駐していない。
田端高台通りからは不動坂と呼ばれる階段を降りるか、緩やかな坂道を下るしかなく、地元の利用者以外に知る人は少なかったであろう。坂道はサクラやアジサイの名所で、行き交う人の目を楽しませてきた。
しかし、この南口が一躍、“聖地”となったのは、2019年に公開された新海誠監督のアニメ映画『天気の子』で描かれたため。主人公の森嶋帆高が、ヒロインの天野陽菜が住むアパートを訪ねるシーンでまず登場する。目的地は山手線と京浜東北線が分岐するあたりとされており、南口からは反対方向になるが、雰囲気のよさから選ばれたのか。
物語の終盤、帆高と陽菜は田端で再会する。そのとき、東京の東半分は水没しており、山手線も東半分が運転不能になっていた。しかし、田端駅南口に通じる坂道は健在。それだけ標高が高いところにあるとの描写だ。
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