特定健診の必須検査項目は、大きく「問診(服薬歴や喫煙歴のほか、自覚症状などを確認する)」「身体計測(身長体重・腹囲・BMI※)」「血圧」「肝機能検査」「血中脂質検査」「血糖検査」「尿検査」にわかれる。※BMI(Body Mass Index):体重(kg)÷(身長m)の2乗
身体計測で腹囲が基準値(男性85cm以上、女性90cm以上)を超えれば内臓脂肪が蓄積している可能性が高く、これに血圧高値、高血糖、血中脂質異常の2つ以上が加わればメタボと判定されて積極的支援の対象となり、食事療法や運動などの保健指導を専門家から受けるよう指示が来る。
腹囲の問題は欧米より少ない
しかし、日本人でこの条件に該当する人は欧米に比べると少ないという。
「その一方で、腹囲やBMIが基準範囲内であっても、血圧高値、高血糖、血中脂質異常が単独で見つかる人は多い。いずれも病気の一歩手前の予備群です。1つでも当てはまる場合、当てはまらない人に比べ、将来、脳卒中や心筋梗塞を発症する可能性が高くなることがわかっている。絶対に見過ごしてはいけません」と今野さん。
①特定健診の必須項目:血圧
そこで今回は血圧高値、高血糖、血中脂質異常(コレステロール、中性脂肪)の3つについて、具体的な数値を見ていこう。まずは血圧だ。
高血圧の診断基準は、上の血圧(収縮期血圧)140mmHg以上、または下の血圧(拡張期血圧)90mmHg以上となっている。
「しかし、正常血圧のうち、本当に合格と言えるのは、上120mmHg未満、下80mmHg未満の場合のみ。上120~139mmHgまたは下80~89mmHgは高血圧予備群。腹囲やBMIが基準範囲内であればこのレベルで『要注意』と指摘されることはありませんが、それだけに気を付けなければいけません」(今野さん)
今野さんらの疫学研究で、高血圧予備群の人を平均10年間、追跡した場合の脳卒中の発症リスクを調べたものがある。
研究では正常血圧(上120mmHg未満、下80mmHg未満)と比較し、上120~129mmHgまたは下80~84mmHgのグループでは約2倍、上130~139mmHgまたは下85~89mmHgのグループでは約3倍高かった。
「健診時は予備群レベルでも、その後高血圧になるリスクが高かったり、他の危険因子(糖尿病や喫煙など)を持っていたりするケースもあることが、脳卒中の発症につながっていると考えられます」(今野さん)
一方、予備群レベルの血圧であれば、減塩を中心とした食生活やお酒の飲みすぎをやめる、運動を習慣にするなどの取り組みにより、適正な血圧値に戻せる可能性が高い。
「何もしなければ加齢の影響も加わり、年々、血圧が上がってきます。40代で予備群と指摘された場合、そこで生活を変えたかどうかで、50~60代になったときの血圧値に大きな差がつきます」(今野さん)
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