ジャクソンホール会議後の日米欧金融政策の行方 白井さゆり慶大教授(元日銀審議委員)に聞く
FFレートは今年末には4%へ
――ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演は株式市場にとって冷や水となりました。
アメリカの7月のCPI(消費者物価指数)が予想より低かったことで、市場内では「FRBはそれほど利上げしない」という楽観的ムードが広がり、株価が上昇していたが、今回の講演はそうした市場に対する牽制となった。
パウエル議長の発言からすると、次回9月のFOMC(連邦公開市場委員会)ではよほどのことがない限り、0.75%の利上げが行われることになりそうだ。その後も年内は11月に0.5%、12月に0.25%の利上げが実施され、FFレートは3.75~4%となる可能性が高いと見ている。
今回、パウエル議長は1970年代の高インフレ時代を引き合いに出し、ボルカー議長が20%近い高金利政策によってインフレ退治に成功するまでの15年間、FRBは不十分な金融引き締めによってインフレ抑制に失敗したとして、その失敗を絶対に繰り返さないという強い決意を示した。
今のインフレを考えれば、FFレートで3.5%程度というのは実質的に大した利上げとは言えない。パウエル氏の発言からして年末までに4%程度までは行くだろう。
――利上げは来年も続くでしょうか。
アメリカのインフレ率は直近7月の前年同月比8.5%(CPI)から来年にかけ低下するだろうが、FRBが目標とする2%程度まで落ち着くには時間がかかり、来年中は難しいかもしれない。そのため、来年のFFレートは4%で据え置くか、物価次第で4.25%までもう一段上げるかではないか。
読みづらいのは、エネルギー価格の行方だ。アメリカのガソリン価格は一時の1ガロン=5ドル台から最近4ドルを割ってきているが、価格高騰でガソリン消費が減ったことが主因だ。価格が下がるとまた消費が増えて価格が上がる可能性がある。
また、ここ最近、アメリカでも天然ガスの価格が急騰している。ロシアが欧州向けのガスの供給を削減し、世界的な供給懸念が高まる中、日本や中国、韓国を含めた消費国の間でアメリカ産を含めたガスの取り合いとなっている。原油価格が下がっても、ガス価格が上がっているため、アメリカのCPIは今年末でも5%前後までの低下にとどまるかもしれない。
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