ジャクソンホール会議後の日米欧金融政策の行方 白井さゆり慶大教授(元日銀審議委員)に聞く

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――株価はまだ調整が必要となるでしょうか。

今年第1、第2四半期のアメリカ企業業績を見るとアナリストの予想を上回る増益基調が続いており、その意味ではアメリカ経済のモメンタム(勢い)はまだ強い。ただ、それだけに今後は金融引き締めで勢いを抑えなくてはならず、企業収益が減って株価が下がる可能性は高いのではないか。

世界的にもこれから利上げが進んでいくと見られ、新興諸国は通貨安と金利高騰でより厳しいし、世界経済の見通しも下方修正されていくだろう。世界経済は一段と不安定化すると見ている。

9月8日のECB理事会で0.75%の追加利上げも

――欧州もユーロ圏で8.9%、イギリスで10.1%(いずれも7月の消費者物価指数)というインフレに見舞われ、利上げを余儀なくされています。

約11年ぶりの利上げを決めた7月のECB(欧州中央銀行)理事会の議事要旨には、対ドルで「パリティ(等価)」を割り込んだユーロ安によるインフレ圧力を強く懸念していることが示された。今回のジャクソンホール会議にはECBのシュナーベル専務理事やフィンランド中央銀行のレーン総裁らも出席したが、やはり同様の懸念を表明していた。

次の9月(8日)のECB理事会では、7月の0.5%の利上げに続き、0.75%の利上げを行う可能性が出てきている。さらに年末にかけて1.5%に向けて追加利上げがありうる。

欧州のインフレはほとんどが(ロシア産エネルギーの供給不安など)供給側の要因であり、需要要因の強いアメリカとは違うので、急激な利上げは景気後退につながりやすいとの見方が強かったが、ここにきてユーロ安とインフレの抑制を優先する方向に軸足を移している。

インフレ率が2桁に乗せたイギリスでは現在1.75%の政策金利ではまだ低すぎるため、年末には3%以上、来年には4%以上の水準まで利上げを行う可能性が高い。

――欧州でも景気後退懸念が高まっています。

ロシア産エネルギーの供給不安が深刻なドイツでも年内にマイナス成長に陥る可能性が高い。イギリスも来年にかけマイナス成長になるだろう。

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